2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700368
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
謝 策 同志社大学, 生命医科学部, 特別研究員 (10598981)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 認知症 / タウ / タウオパチー / アクチン / 線虫 |
Research Abstract |
加齢に伴い発症する認知症の多くには変性神経細胞内に微小管結合タンパク質・タウの蓄積が観察される。このような病理変化を有する疾患群はタウオパチーと総称される。我々は、樹立したタウオパチー線虫モデルにおいて、タウの発現により、神経細胞の機能障害および形態異常が誘導される事実を見出した。線虫の神経細胞に発現したタウは、異常なリン酸化および微小管からの解離など、病態脳に蓄積するタウとよく似た異常状態を呈していた。タウオパチー発症機構としては、この異常なタウと相互作用する因子が深く関与すると考えられる。本年度は、線虫の神経細胞に発現した異常タウと結合する因子について、電気泳動と質量分析の組み合わせによる同定を進めた。申請者らにより作製した抗タウ抗体を磁気ビーズに固定させ、線虫からタウを免疫沈降し、アクリルアミド電気泳動をさせた後、銀染色を行った。対照実験グループと比較し、タウ発現線虫に特異的に認められるバンドを切り出し、質量分析による同定を試みた。その結果、数種の同定された結合因子の中に、アクチンが存在することを明らかにした。アクチンは細胞中の細胞骨格タンパク質一種であり、細胞形態の変化と維持などの重要な働きを持つ。神経細胞においても軸索伸長、スパインの形態形成など神経機能における重要性が明らかである。タウオパチー発症メカニズムの現行研究の多くがタウと微小管との関連を標的としているが、タウとアクチン結合の生理学的および病理学的意義については不明なところが多い。タウの機能異常がアクチン系に影響を与える可能性を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、タウの毒性責任配列と相互作用する因子を同定することにより、タウオパチー発症機構を解明することである。当初の計画では、線虫に発現させたタウの全長およびフラグメントを精製して、アフィニティーカラムを作製し、結合因子の精製、電気泳動と質量分析を組み合わせにより、結合因子の同定を進める予定であった。しかし、これまで、カラムの作製に必要な純度のタウは取れていない。その理由の一つとして、全タンパク質の発現パターンにおいて、線虫はマウス脳および大腸菌との間に違いがあり、従来のタウの精製法では充分な純度、量のタウが得られなかったと考えている。この現状のもとで、研究方法を転換し、抗タウ抗体を利用して免疫共沈法を試みた。さらに、電気泳動と質量分析の組み合わせにより、タウ全長と結合する因子の同定まで進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、抗タウ抗体のみならず、抗タグ抗体も利用し、タウの全長およびフラグメントを免疫共沈させ、電気泳動と質量分析の組み合わせにより、異常なタウとの結合因子の同定を進める予定である。本年度中、免疫共沈した特異的なバンドの中には、質量分析で特定できないバンドが幾つか存在した。したがって、質量分析における検出感度の向上によりさらに詳細なタウ結合因子の同定が可能になると考えている。この目的で、使用する抗体の種類および量、線虫の量などを検討する予定である。さらに、リストアップされた結合因子をもとに、アクチンを含め、タウ毒性に関与する可能性が高い有力な候補因子を選び、RNAiで発現抑制、必要に応じて過剰発現を行い、神経系におけるタウとの関連、タウオパチー発症機構との関与などを調べる予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の解析により、当初計画していた方法よりもより少量の線虫を用いて結合タンパク質を同定する方法の開発に成功した。それにより、動物飼育経費を削減する事が出来た。一方、平成25年度では候補因子の同定、および機能解析により大量の線虫を要すると試算された。したがって、平成24年度に計上した動物飼育、タウ精製に関する経費の一部を平成25年度に計上し、動物飼育、および候補タンパク質の同定に関する実験経費に用いることとした。
|
Research Products
(3 results)