2012 Fiscal Year Research-status Report
視床―大脳基底核回路における行動に対する期待の処理機構
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24700425
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
山中 航 玉川大学, 脳科学研究所, 嘱託研究員 (40551479)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 視床 / 線条体 / 動機づけ / 行動選択 / 報酬 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、視床正中中心核の中に存在する異なる感覚応答を示す細胞タイプ(感覚刺激に対して長い潜時で応答するLLF細胞と感覚刺激に対して興奮性応答を示さないNS細胞)が異なる神経回路を介して、状況に応じた適切な行動選択の実現に貢献している、という仮説の検証を行うことである。 当該年度において、まずこれらのLLF・NS細胞が異なる神経回路を構成しているかどうかニホンザルを用いて電気生理学的に検証した。線条体に刺激電極を、視床の正中中心核に記録電極を刺入し、逆行性刺激法によって線条体に投射している正中中心核の細胞を同定し、その細胞が非予測的に感覚刺激を提示したときに応答するかどうかでその細胞がLLF細胞か、それともNS細胞かを判別した。先行研究によって、解剖学的に正中中心核の線条体への投射は前交連よりも後方の背側部であることがわかっているが、線条体は非常に大きな領野であるので、最初に逆行性スパイクが記録できたdepth profileに基づいて投射マップの作成を行った。その結果、相対的に正中中心核の前方―後方軸および背側―腹側軸は線条体の前方―後方軸および背側―腹側軸へと対応して投射関係がみられ、また正中中心核の内側―外側軸は線条体の腹側―背側軸に対応して、投射のトポグラフィカルなマップを得ることができた。現在まで22個の正中中心核細胞(LLF13個、NS9個)を記録したが、4/13個(31%)のLLF細胞が線条体投射細胞として同定できた。 これらの結果は感覚刺激に対して応答を示すLLF細胞が主として線条体に投射していることを示唆するものであり、本研究の仮説を支持するものである。動物の周囲の状況に関する情報を含む感覚刺激を受ける細胞が、期待を表現していることが知られている線条体の活動を調節して、適切な行動選択を達成するための神経回路メカニズムとして重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として、(1)刺激実験による神経回路の同定、および(2)同定した細胞タイプが行動に対する期待の処理機構に対してどのように貢献するか明らかにすることが平成24年度に行う計画であった。(1)については、現在までに外界からの感覚刺激に対して応答するLLF細胞が線条体に投射していることを示すデータを得ている。(2)については、期待通りだったときの反応時間と期待外れだったときの反応時間の差分を用いて、動物の期待の大きさを試行ごとに推定することによって、LLF細胞が内的な期待と外的な指示との「ずれ」の信号をコードしていることを示唆するデータを得ており、現在論文にまとめて投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、平成25年度も引き続き、刺激実験による投射細胞の同定と行動選択肢に期待差がある課題における投射細胞の活動の記録および解析を進めていきたい。現在、13個の線条体投射LLF細胞が記録できているが、より説得力のあるデータにするために20個以上は記録したいと考えている。 現在の問題点としては、非常に小さい核である視床の正中中心核から広大な線条体へ投射しているため、線条体投射細胞が記録できる確率が非常に低い。この問題を解決するために、(1)ニホンザルにおける視床線条体投射の解剖学的知見を得る、(2)逆行性スパイクを効率的に記録するために視床に刺入する記録電極を電極軸に対して複数の電極が配置された多点記録電極を用いる。(1)については逆行性スパイクが記録できた線条体領域に逆行性トレーサーを注入して視床から投射を受けているか確認したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)