2013 Fiscal Year Annual Research Report
視床―大脳基底核回路における行動に対する期待の処理機構
Project/Area Number |
24700425
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
山中 航 玉川大学, 脳科学研究所, 嘱託研究員 (40551479)
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Keywords | 視床 / 線条体 / 動機づけ / 行動選択 / 報酬 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、視床CM核の中に存在する異なる感覚応答を示す細胞タイプ(感覚刺激に対して長い潜時で応答するLLF細胞と感覚刺激に対して興奮性応答を示さないNS細胞)が異なる神経回路を介して、状況に応じた適切な行動選択の実現に貢献している、という仮説の検証を行うことである。 これまでの成果によって少数ながらもLLF細胞(4/13, 31%)が線条体に投射することが同定できた(NS細胞:0/9)。最終年度においては、これらLLF/NS細胞の行動選択過程における役割について解析を進めた。その結果、行動選択肢の価値が異なるバイアス課題中、大報酬と連合した行動または小報酬と連合した行動のどちらを行うべきかを指示する外的な手がかり刺激の提示の1秒前から「特定の行動が大報酬と連合する文脈」に選択的に活動を増加させる(例えば右行動が大報酬と連合するときの方が左行動が大報酬と連合するときよりも活動が大きい)NS細胞が多く見つかった。またこの持続活動の大きさは、その特定の行動が大報酬と連合するときにその後の行動反応時間と負の相関を示した。これらの結果は、報酬指示信号に先行するこのNS細胞の持続放電活動は動物の内的な期待に基づく「行動バイアス」を反映していると考えられる。 (1)感覚刺激に対する応答性、(2)逆行性刺激法による機能結合の検証、の結果から視床CM核の異なる種類の細胞であるLLF細胞とNS細胞は異なる入出力関係(神経回路)を持っていることが示唆される。また(3)NS細胞は動物の内的な期待(報酬)に基づく「行動バイアス」を反映する可能性があることから、大脳皮質ー基底核ー視床(NS細胞)ー大脳皮質という基底核の外ループでバイアスの状態がモニターされ、基底核ー視床(LLF細胞)ー線条体という内ループを介して外的要求に基づいてバイアスのコントロールが行われる可能性を示唆する。
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