2012 Fiscal Year Research-status Report
知覚―運動ループの不一致が痛覚および変化検出機構に及ぼす影響
Project/Area Number |
24700578
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大鶴 直史 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 助教 (50586542)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳磁場計測 / 体性感覚 |
Research Abstract |
自己身体認知が適切に行われるためには、視覚情報のフィードバックと実際の運動が一致している必要がある。本研究は、自己の運動とそれに伴う感覚フィードバックの乖離が、感覚情報処理に与える影響を調べることを主目的としている。本年度は静止時における感覚情報の不一致が体性感覚応答に与える影響を検討した。健常者を対象に、鏡を用いて実際の身体位置と視覚的身体位置の間に不一致を生じさせ、この不一致が体性感覚情報処理に及ぼす影響を検討した。被験者の両手をミラーボックスに挿入させ、中央にある鏡に右手を映し、その胸像を鏡で隠れた自身の左手であるかのような錯覚状態をつくり実験を行った。実際の左手と右手の鏡像が一致した位置にある条件(一致条件)と,実際の左手に対し右手の鏡像が5センチ上方にある条件(不一致条件)において、左示指電気刺激に対する皮質反応を脳磁場計測装置で測定した。不一致条件において、被験者は実際に手の無いところに刺激が呈示されているような錯覚を生じる。結果、主として第一次体性感覚野の応答が不一致条件において調節を受ける傾向が確認された。これは、体性感覚情報処理の初期段階において視覚情報からの影響を受けることを示唆している。現在は、被験者動員数を増やすとともに、多信号原解析を用いることでより詳細な検討を行っている。また、被験者の主観的な錯覚の程度に応じて、体性感覚野の応答が変化することも考えられるため、主観的スケールと皮質応答の関係も検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ミラーボックスにより視覚的操作により、実際の身体位置と視覚的身体位置が異なる条件で実験を行った。当初の予定では、運動時の知覚ー運動ループの不一致が体性感覚情報処理に与える影響としていたが、電極が動くことによるノイズの出現が解決されなかったため、やや計画を変更して行った。 現在のところデータ取得は順調であり、次年度以降の学会発表および論文投稿に向けて準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、第一実験のデータ取得を行った。このデータに関しては、次年度以降学会発表を行い、神経科学系雑誌への論文投稿を予定している。また、第二実験として痛覚刺激を用いて、第一実験と同様の手続きで痛覚関連脳活動に関する実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度分の未使用額が生じた主な理由は、現在保有している機器を使った解析から着手したために、計上していた解析ソフトMATLABの購入を次年度以降にずらしたためである。また、データ取得および解析を第一に、本年度の計画を実行したため、海外学会での発表を控えたことも未使用額が生じた理由の一つである。 次年度は、本年度に実施した研究の学会発表に伴い、国内外での発表に計上通り50万円程度を使用する予定である。加えて、論文投稿に関わる投稿料と別刷り代金として30万円程度を使用する。 また、所属変更により当初予定していた電気刺激装置が使用できない可能性があるため、75万円程度の電気刺激装置の購入を検討している。
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