2012 Fiscal Year Research-status Report
筋活動を考慮した高強度ランニングエコノミー評価法の開発
Project/Area Number |
24700643
|
Research Institution | International Pacific University |
Principal Investigator |
吉岡 利貢 環太平洋大学, 体育学部, 講師 (60508852)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 筋活動 / 長距離走 / ランニングエコノミー / 走の経済性 |
Research Abstract |
ランニングエコノミー(Running economy: RE)は、一定速度で走行中の酸素摂取量(VO2)の高低で評価される。中長距離走パフォーマンスを高めるためのトレーニングを計画する際、対象者のREの優劣を把握することは必要不可欠であるが、測定には無酸素性代謝の貢献が極めて小さいLT以下の強度を用いなければならない。しかしながら、中距離走はもとより長距離走においても、ほぼすべての種目はLT以上の強度でレースが展開されるため、トレーニング課題を明確にし、トレーニング計画の立案、実践および評価を適切に行うためには、レース強度におけるREを評価することが必要になる。そこで本研究では、低強度でのVO2と力学的エネルギーおよび筋活動量の関係性(回帰式)にレース速度で疾走中のこれらの指標を代入することによって、レース強度におけるREを推定する方法を開発すること、またその有用性を競技パフォーマンスとの関係から明らかにすることを目的とした。 まず、筋活動を定量化する筋を同定するため、大学生中長距離ランナー11名を対象とし、下肢を構成する各筋の活動量の推移を調査した。その結果、分析に用いたほぼすべての筋(大腿直筋、外側広筋、大腿二頭筋長頭、半腱様筋、腓腹筋およびヒラメ筋)において走速度の上昇に伴って筋活動量が増大した。また、外側広筋の活動量とランニングエコノミーの間に正の相関関係(r = 0.54)、半腱様筋の活動量とランニングエコノミーの間に負の相関関係(r = -0.56)が認められた。 これらの結果から、今後は、ランニングエコノミーに関係するこれらの筋の活動量の総量とランニングエコノミーの関係にレース強度における筋活動量を代入することによってこの強度でのランニングエコノミーを推定し、パフォーマンスとの関係を明らかにする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、2年間の申請期間中で、筋活動量を用いた超最大強度でのランニングエコノミー推定法の有用性を明らかにすることを目的とし、平成24年度は、1)走速度の上昇に伴う下肢の筋活動量の推移を明らかにし、2)各筋の活動量とランニングエコノミーの関係からレース強度におけるランニングエコノミーを算出し、3)パフォーマンスとの関係性からその有用性について明らかにすることを目的とした。被験者には、学生中距離ランナー11名を用いた。彼らにトレッドミル上での190、210、230、250および270m/minでの4分間のランニングを行わせ、酸素摂取量を測定した。また、これらと同一速度での筋活動量を、大腿直筋、外側広筋、大腿二頭筋長頭、半腱様筋、腓腹筋およびヒラメ筋の各筋を用いて評価した。筋活動量は、170m/minにおける活動量に対する相対値で評価した。その結果、外側広筋の活動量が高い者ほどランニングエコノミーが劣っていること、半腱様筋の活動量が高い者ほどランニングエコノミーが優れていることを明らかにした。ただし、平成24年度は、研究代表者の異動に伴い実験環境に変化が生じ、レース強度(超最大強度)での筋活動量を評価することができなかった。今後は、ランニングエコノミーに関係するこれらの筋の活動量とランニングエコノミーの関係から、レース強度におけるランニングエコノミーを推定し、その有用性について検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に行った実験の結果、筋活動量の個人差がランニングエコノミーに影響することが明らかとなった。しかしながら、研究代表者の異動に伴って実験環境に変化が生じ、レース強度(超最大強度)での筋活動量を評価することができなかった。そこで平成25年度は、高速トレッドミルを保有する外部機関に協力を要請し、低強度での筋活動量と酸素摂取量の関係を求めることに加えて、レース強度での筋活動量を評価し、そのランニングエコノミーを算出する。また、そのランニングエコノミーとパフォーマンスの関係について検討する。加えて、この機関では、3次元の動作解析を同時に行えるため、走フォームの客観的評価も行う。これによって、各速度における力学的エネルギーを算出し、筋活動量と力学的エネルギーの関係性を検討する。また、今回開発する評価法を筋活動量を定量できない環境でも推定できるように、力学的エネルギーを簡易に評価する方法を確立する準備も進める。すなわち、加速度計を装着可能な部位数か所の加速度を算出し、これらを用いて力学的エネルギーを推定することが可能か否かを検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時の予算に組み込んでいなかった2次元動作解析ソフトウェアを購入する必要が生じたため、被験者への謝金の支払いを見送った。これにより、一部の予算が次年度へ繰り越しとなった。翌年度の研究費の主な使用用途は、験者および被験者の研究協力機関までの旅費、筋活動および強度確認のための血中乳酸濃度を分析するための消耗品が大半を占める。また、分析を円滑に進めるため、分析専用のノートPCを購入する。その他、本研究に関する情報収集、研究協力機関との研究打ち合わせ、研究成果を広く社会に還元するための国内・外での学会発表にかかわる旅費、論文発表にかかわる経費を計上している。
|