2012 Fiscal Year Research-status Report
運動が視床下部Sirt1の働きに与える影響とその機序の検討
Project/Area Number |
24700764
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
川上 心也 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (60410271)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 運動処方 / 視床下部 / Sirt1 / 肥満予防 |
Research Abstract |
運動は、肥満防止の他に、過食防止や身体活動量を増加させる等の効果を持つ。本申請課題の目的は、これら運動の効果が、視床下部で生体のエネルギー代謝を司るSirt1(NAD依存性脱アセチル化酵素)に調節されている可能性を探ることである。 そこで、平成24年度の課題として、普通食または高脂肪食飼育下のラットを、それぞれ対照(非運動)群・運動群(自発回転ケージで飼育)・Pair-fed群(運動群の摂食量と同量の飼料を給餌)の3群(計6群)に分け、飼育後摘出した視床下部における、Sirt1の発現量と活性、摂食亢進作用を持つFoxO1、および脱アセチル化されるAce-FoxO1発現量についてそれぞれ調べ、運動が視床下部Sirt1に与える影響を検討した。 その結果、Sirt1およびFoxO1発現量については、対照・運動・Pair-fedの各群間で統計学的有意差が観察されなかったが、普通食群に比べ高脂肪食群で有意に減少していた。一方、Ace-FoxO1については、運動群に比べPair-fed群で発現量が有意に減少していた。 従って、運動が視床下部Sirt1発現量に与える影響は観察されなかったものの、高脂肪食摂取下では、視床下部のSirt1およびFoxO1の発現が抑制された。一方、Ace-FoxO1発現量から、運動による視床下部Sirt1の活性促進作用が示唆された。ただし、Sirt1活性は各群間で差異がなく、本実験条件では、運動が視床下部Sirt1の活性化に影響するとの確証は現段階で得られていない。しかし一方で、高脂肪食を摂取したPair-fed群の体重とSirt1活性の間には強い正の相関が観察されており、視床下部Sirt1の活性が、高脂肪食摂取時の体重調節に深く関わることが推察された。これは、運動要因以外の、視床下部Sirt1を介した体重調節の可能性を考慮する上で、重要な知見と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題におけるラットの飼育条件では、自発運動による視床下部Sirt1発現量および活性化の明確な変化は得られなかった。したがって、当初予定していた、「免疫組織化学的手法を用いた、視床下部の特定部位におけるSirt1発現の検索」を実施出来ていないことから、達成度は「やや遅れている」と評価した。 また、Sirt1の発現量および活性化については、運動群と非運動群との比較で明確な差異は得られなかったものの、高脂肪食摂取群においては、Sirt1 の発現量が有意に減少することが判明した。したがって、本研究課題の飼育条件では、自発運動よりも高カロリー飼料の摂取で、視床下部Sirt1の発現が影響を受けると推察される。このことから、Sirt1が効率よく発現・活性化する運動条件の他に、摂取飼料の脂質成分の配合割合について考慮する必要性が生じていることも、達成度の遅れの原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず視床下部Sirt1が、どのような運動条件で最も発現、あるいは活性化するのかを、継続して検討する。その後、運動が視床下部Sirt1を介し摂食量や活動量に影響を及ぼす機序について検討するため、Sirt1の発現を人為的に増加させるリスベラトロール(ポリフェノールの一種) をラットに経口投与した場合の、摂食量や活動量の評価をおこなう。経口投与群と運動群とを比較することにより、運動の効果を除いたSirt1の影響を評価することが出来る。 なお、当初予定していた「免疫組織化学的手法を用いた、視床下部の特定部位におけるSirt1発現の検索」については、視床下部Sirt1が最も発現・活性化される運動・飼育条件がより明白になった後に実施する予定である。この時、視床下部のスライド切片を多数作製するため、最終年度に予定していたプロオピオメラノコルチン(視床下部において摂食抑制効果を持つ)と、アグーチ関連タンパク質(摂食促進効果を持つ)の発現状況の検討についても、同様の免疫組織化学的手法を用いて同時に実施することが可能である。この同時実施により、本研究課題の達成度の遅れを解消したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)