2014 Fiscal Year Annual Research Report
運動が視床下部Sirt1の働きに与える影響とその機序の検討
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24700764
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
川上 心也 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (60410271)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Sirt1 / 視床下部 / 運動療法 / 摂食行動 / 内臓脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、運動により生じる摂食量の低下が、視床下部で発現しているNAD依存性脱アセチル化酵素(Sirt1)により調節されるか否かを調べると共に、運動が視床下部Sirt1を介して生体に及ぼす影響とその機序について検討した。 最終年度には、種々の条件で飼育した雄ラットを用い、視床下部内の各種物質の発現量を測定した。その結果、Sirt1発現量ならびに活性化に関与するpAMPKの発現量は、運動群において増加した。さらに、高脂肪食を給餌した運動群では、視床下部のSirt1発現量と内臓脂肪量との間に、強い正の相関が確認された。なお、この時のSirt1活性は、いずれの条件でも変化がなかった。 また、研究期間を通じ、Sirt1の脱アセチル化により摂食量調節に関与するタンパク質であるStat3(摂食抑制作用を持つ)およびFoxO1(摂食促進作用を持つ)の発現量について調べたところ、運動による有意な変化はみられなかった。しかし、Pair-fed群(運動群と同エネルギー量の飼料を給餌した群)でのStat3の脱アセチル化の動態から、Sirt1は、摂取エネルギー減少により、かえって摂食を抑制することが推察された。一方、FoxO1の脱アセチル化の動態から、Sirt1は、高脂肪食摂取時には摂食を抑制すると推察された。 以上より、視床下部Sirt1は、運動における摂食量の変化には関与しないが、生体がエネルギー過剰な状況に置かれた場合、内臓脂肪の代謝に関与することが推察された。また、生体が生命維持に支障のない範囲で低エネルギー状態に晒された場合、視床下部Sirt1が摂食量の調節に関与すると示唆された。従って、視床下部Sirt1は、栄養状態の変化に対し、エネルギーの蓄積・消費を調節することで、生体の生理的な健常性を維持するよう機能すると共に、その機能は運動により向上する可能性が新たに示唆された。
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