2013 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙線生成核種年代測定を用いた日本アルプスの山体変形開始時期の特定
Project/Area Number |
24700944
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西井 稜子 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (00596116)
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Keywords | 宇宙線生成核種年代測定 / 重力性変形 / 日本アルプス |
Research Abstract |
本研究では,日本アルプス主稜線付近に分布する線状凹地(重力性変形地形)の形成時期を宇宙線生成核種年代測定によって特定し,斜面の重力性変形プロセスを解明することを目指した.年代試料は,飛騨山脈の花崗岩地域に分布する線状凹地とそれに付随する地形群から採取した.そして,試料の分析・年代測定を東京大学タンデム加速器施設にて行った.本研究の主な研究成果として,次の3点を挙げることができる. 第一に,対象地域の線状凹地の形成時期を特定することができた点である.いずれの線状凹地も完新世以降に形成されたと推定された.ただし,その形成開始時期は場所によって大きく異なり,対象地域では,その差は最大約8千年に達することが明らかになった.第二に,対象地域の線状凹地の形成プロセスを復元することができた点である.線状凹地の形成プロセスを次の3つの単純モデル(1回のイベント,複数回のイベント,等速運動,の3タイプ)に想定し,それらのモデルから算出された計算値と測定値(核種濃度)とを比較した.その結果,対象とした線状凹地のほとんどは,複数回のイベントによって形成されてきたことが推定された.第三に,線状凹地の形成開始時期とそれに影響を及ぼしたであろう因子(降水量と地震活動)との対応関係を絶対年代を基に検討した点である.対象地域周辺の過去の地震活動の履歴と線状凹地の形成開始時期とを比較したところ,どちらも年代値の誤差が大きいものの,対象とした4つの線状凹地の開始時期と地震活動の時期は,ほぼ重なることが明らかになった.一方,最も古い線状凹地の形成時期と地震活動との対応関係については,地震活動のデータがないため,現時点では不明である.
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