2012 Fiscal Year Research-status Report
発がんシグナルが誘導するDNA複製ストレス応答ークロマチン分子動態と治療への展開
Project/Area Number |
24700952
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
関本 隆志 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (20436322)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 発がん / Y-familyポリメラーゼ / DNA再複製 |
Research Abstract |
活性化がん遺伝子の誘導するDNA複製ストレスは、ゲノム不安定性の原因として注目されるが、その分子機構は十分明らかではない。我々は、がん細胞において点突然変異を導入しやすいY-familyポリラーゼ(Y-Pol)の働きが亢進する仕組みを研究する過程で、がん遺伝子による複製ストレスがY-Polを活性化する可能性に着目し研究を遂行している。まず、実験系として汎用されるcyclin Eを高発現するヒトU2OS細胞において、DNA再複製にともないDNA損傷だけでなく、モノユビキチン化PCNA(Ub-PCNA)の増加やY-Polフォーカス形成を見出した。そこで再複製におけるY-Polの役割をさらに解明するために、複製開始制御因子gemininをノックダウンし、より速く高度の再複製を起こす実験系を樹立した。その解析結果から、再複製が複製フォークを停滞させ、Ub-PCNA増加を介してY-Polを複製フォーカスに動員すること、EdUで標識した新規合成DNAはUb-PCNAやY-Polの一員であるPol ηと共沈することを見いだした。また、Y-polの発現抑制はGemininノックダウンによる再複製の進行を抑制した。以上の結果は、発がんシグナルが誘導するDNA再複製にY-Polが関与することを強く示唆する。このモデルは、他のがん遺伝子にも複製開始の活性化亢進が報告されている点や、がんゲノムにおいてコピー数の変化やDNA再構成とともに点突然変異が多く検出されることと合致する。 本研究の第一の特色は、発がん遺伝子によるDNA再複製に焦点を当てて、我々自身が実績を挙げてきたY-Polを中心に取り組む点である。本研究から、腫瘍悪性化の分子機構と早期がん治療法に重要な手がかりが得られることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画であった、発がんシグナルが誘導するDNA再複製におけるY-familyポリメラーゼの役割についてはおおむね解析が終了し、現在論文投稿の準備をしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画初年度は、cyckin E過剰発現やgeminin発現抑制が誘導するDNA再複製におけるY-familyポリメラーゼの役割について解析を行ってきた。今後は、ヒト正常細胞に活性型Ras, c-myc過剰発現などの発がん遺伝子を発現させて、上記モデル細胞で得られた知見を検証し、DNA再複製におけるY-Polの役割を一般化する。これらの実験系では、G2停止ではなく、G1-S期停止となるためDNA再複製の解析が困難となる。そこで、既知のDNA複製起点 (lamin B2, c-myc近傍など) 周囲のDNAコピー数をFISHにより測定する。また、局所への蛋白動員をクロマチン免疫沈降と定量PCRを組み合わせて解析する。 また、我々は、新しいタイプの抗がん剤として期待されている17-AAGなどのHsp90阻害剤がY-Polの機能を抑制することを報告してきた。そこで、モデル細胞系を用いて、17-AAGが発がん遺伝子による複製ストレス応答やDNA損傷、アポトーシスに与える影響を解析し、治療に利用できる可能性を検討する。また、他に報告されているDNA修復関連蛋白の阻害剤についても同様の検討を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を行うにあたり、細胞培養や分子生物学・生化学実験が必須となる。研究経費は、主にこれらの実験に必要な消耗品(液体培地・血清、ディッシュ等のプラスティック製品、分子生物学・生化学実験用試薬)の購入に充てられる。消耗品の経費金額については、従来の経験から概ね研究計画を円滑に推進するのに適したものになっている。 旅費については、年2回の成果発表(国内学会)を予定している。
|