2013 Fiscal Year Research-status Report
発がんシグナルが誘導するDNA複製ストレス応答ークロマチン分子動態と治療への展開
Project/Area Number |
24700952
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
関本 隆志 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (20436322)
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Keywords | 発がん / Y-familyポリメラーゼ / DNA再複製 / がん遺伝子 / 複製ストレス |
Research Abstract |
発がんシグナルが誘導するDNA複製ストレスは、発がん初期におけるゲノム不安定性を引き起こし、発がんやその悪性化の原因として注目されるが、その分子機構は十分明らかではない。我々はがん細胞において点突然変異を導入しやすいY-familyポリメラーゼ (Y-Pol) の働きが更新する仕組みを研究する過程で、がん遺伝子による複製ストレスがY-Polを活性化する可能性に着目し研究を行っている。 前年度までに、DNA再複製のモデル実験系であるU2OS細胞での複製開始制御因子gemininのノックダウンにおける再複製においてY-Polの一員であるポリメラーゼη (Pol η) が関与する事を見いだしている。本年度は研究をさらに発展させ、他のY-Pol (Pol ι, Pol κ, REV1) がDNA再複製に関与する事、 がん遺伝子cyclin Eの過剰発現によるDNA再複製においてもY-Polが重要な働きをする事を見いだした。さらに、ヒトケラチノサイト初代継代細胞にヒトパピローマウイルスE6/E7を発現させDNA再複製を誘導する系においても同様の結果を得ている。 一方、U2OS細胞においてがん遺伝子c-Mycを発現誘導すると、再複製は誘導されず、一過性のDNA合成亢進に続いて、DNA損傷、ゲノム不安定性、細胞死が誘導された。この複製ストレス応答にもPol ηの関与を示唆する結果を得ており、その機構と役割の解析を進めている。 以上の結果は、発がん初期における複製ストレスにY-Polが関与することを強く示唆し、ゲノム不安定性の機構に新しい知見を提供する。また、Y-Polの関与は点突然変異の発生を亢進させる可能性が考えられ、特にがんゲノムで最近報告された構造的変化近傍での点突然変異率の増加に関与する可能性が興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
活性化がん遺伝子が誘導するDNA再複製におけるY-familyポリメラーゼの役割については、そのモデル実験系であるGeminin発現抑制系における解析やヒトケラチノサイト初代継代細胞にヒトパピローマウイルスE6/E7を発現させDNA再複製を誘導する実験系を含め、解析が終了し、現在論文投稿中である。 また、がん遺伝子c-Mycにより引き起こされるDNA再複製を伴わない複製ストレスにおいても、Y-familyポリメラーゼが関与する事を見いだしており、現在解析を進めている。 しかし、平成25年度研究実施計画にあるDNA再複製に関与する新規蛋白の検索については、現在解析が遅れており今後解析を進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究課題については継続して研究を遂行する。 最近、ヒストン脱メチル化酵素の過剰発現によりDNA再複製が更新することが報告された。この因子をはじめとするクロマチン分子動態に影響を与える因子が複製ストレスを誘導する可能性を検討し、この複製ストレスにおけるY-familyポリメラーゼの役割を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実施計画の遅れにより、実施できなかった実験に予定していた経費を使用しなかったため。 本研究を行うにあたり、細胞培養や分子生物学・生化学実験が必須となる。研究経費は主にこれらの実験に必要な消耗品(液体培地・血清、細胞培養用ディッシュやピペット等のプラスティック製品、分子生物学・生化学実験用試薬)の購入に充てられる。消耗品の経費金額については、従来の経験から概ね研究計画を円滑に推進するのに適したものになっている。 旅費については、年2回の成果発表(国内学会)を予定している。
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