2014 Fiscal Year Annual Research Report
生物指標を利用した地球温暖化による生態系の脆弱性の評価
Project/Area Number |
24710029
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大石 善隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 博士研究員 (80578138)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 生物指標 / コケ植物 / 地球温暖化 / 山岳地域 / 生態系保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
(背景・目的)亜高山~高山帯の生態系は、温暖化に最も脆弱な生態系の1つであり、保全への取り組みが緊急の課題となっている。コケ植物は山岳地域で多様性が高く、環境変化に敏感に反応するため、地球温暖化が亜高山~高山帯生態系に与える影響への有用な指標になると期待される。そこで、本研究ではこうしたコケ植物の利点を活かし、温暖化に対するコケ植物の応答を指標として亜高山~高山帯生態系の変化や脆弱性を評価する手法を開発し、効果的な生態系の保全計画の提案につなげることを目指した。 (調査地・調査方法)調査地は八ヶ岳一帯(長野県)とした。本研究では、まず、標高傾度に沿ったコケ群落変化パターン(コケ群落の垂直分布)の把握を行った。さらに、野外に温暖実験区を設置し、温暖化がコケ多様性に与える影響について解析した。以上の結果に基づいて、温暖化がコケ多様性に与える影響とその指標性について検討を行った。 (結果・考察)調査で得られたデータを解析した結果、「標高に沿ってコケ多様性は変化し、亜高山帯域で高い多様性が維持されていること」が明らかになった。この理由として、亜高山帯の高い空中湿度などの環境要因に加え、亜高山帯では低山帯の種、および高山帯の種が同時に分布してことが挙げられた。また、温暖化実験の結果について、気温を約1.4度(日中)上昇させた温暖区では、実験後1年でコケの被度が50%以上も低下した。これは、気温の上昇や湿度の低下によって、光合成活性の低下などコケに強いストレスを及ぼしたためであると推察された。 以上の結果に基づいて、気温の上昇や乾燥化に敏感な種を指標として抽出し、温暖化の影響に脆弱な地域を評価する手法を提案した。本手法は亜高山~高山帯の生態系のモニタリングや生態系の脆弱性の評価に大きく貢献すると期待される。
|
Research Products
(4 results)