2012 Fiscal Year Research-status Report
臭素系難燃剤が精子の量と質の低下を引き起こす分子機構の解析
Project/Area Number |
24710069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宮宗 秀伸 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術職員 (80422252)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 臭素化系難燃剤 / 内分泌かく乱物質 / 雄性生殖 / 精子形成障害 |
Research Abstract |
本研究では、Deca-BDE曝露によって生じる精子数減少の分子メカニズムを解析することを目的としている。特に、平成24年度の研究実施計画は、Deca-BDE曝露による雄性生殖への影響を、1) 精巣内特殊接合装置 (Apical ectoplasmic specialization, Apical ES) における、リン酸化シグナル伝達系の異常の有無、および2) Deca-BDE曝露マウスの精巣におけるESや精子頭部の構造上の異常の有無を、電子顕微鏡によって解析・評価することであった。新生児期ICRマウスに対して、Deca-BDEが皮下注射によって0.025から2.5 mg/kg/day の量で生後5日間連続投与され、12週齢において評価された。 1)Apical ES における、リン酸化シグナル伝達系の異常の有無の評価について我々は本項目において、新生児期Deca-BDE曝露が、精巣におけるCTTN、SRC、ERK p44/42のリン酸化レベルに異常を引き起こすことを明らかにした。 2)電子顕微鏡によるESや精子頭部構造の異常の有無の評価について 評価の都合上、平成24年度は上記の解析は実施せず、平成25年度に予定していた血中甲状腺ホルモン濃度と精巣における甲状腺ホルモン受容体の発現レベルの解析を行った。この結果、新生児期Deca-BDE曝露は甲状腺ホルモンT3、T4の血中濃度に有意な差を生じなかった。しかしながら、より高濃度のDeca-BDE曝露マウスにおいて、ややT3およびT4の増加傾向が見られた。一方で、精巣における甲状腺ホルモン受容体の発現レベルについては、より低濃度の曝露において、有意な減少が確認された。 さらに、精巣の組織評価によって、Deca-BDE曝露マウスでは、精細管内に存在するセルトリ細胞数と伸長精子細胞数の減少が引き起こされていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた項目2) については、平成25年度以降の評価対象としたが、それに代わり、平成25年度に実施を予定していた血中甲状腺ホルモン濃度と精巣における甲状腺ホルモン受容体の発現レベルの解析を行った。そのため、研究そのものの達成度としては、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の我々の解析から、Deca-BDE曝露が、甲状腺ホルモン受容体の発現異常を誘導することが示された。さらに我々は、Deca-BDEがセルトリ細胞数の減少を引き起こすことを明らかにした。甲状腺ホルモンの機能は、セルトリ細胞の発生・分化に重要であることが知られている。このことから、Deca-BDE曝露が引き起こした甲状腺ホルモン受容体の発現異常が、甲状腺ホルモン機能に障害を引き起こす可能性が示唆された。ところで、甲状腺ホルモン受容体はいくつかのアイソフォームおよびバリアントを持つ。受容体における各種バリアントの発現量は、選択的スプライシングによって制御されていることが知られている。さらにこれらのバリアントの正常な発現調整は、甲状腺ホルモンの機能に重要であることが報告されている。しかしながら、Deca-BDEが甲状腺ホルモン受容体の各種バリアントの発現量におよぼす影響については知られていない。 上述したセルトリ細胞数の減少は、その一因として、甲状腺ホルモン受容体の発現異常などを通じて生じた甲状腺ホルモンの機能障害によるものだと想定されるが、セルトリ細胞の減少は精子数の減少を含めて、雄性生殖の機能低下の一因となる。したがって、Deca-BDE曝露が甲状腺ホルモン受容体の発現異常や機能障害を引き起こすメカニズムを解析することはDeca-BDEの雄性毒性を評価する上で極めて重要となる。そこで平成25年度では、年次計画4) および5) にしたがい、Deca-BDEが精巣および精巣上体に引き起こす酸化ストレスの有無を評価するとともに、新たに、Deca-BDEが甲状腺ホルモンの機能障害を引き起こす機序を調査するため、甲状腺ホルモン受容体の各種アイソフォームやバリアントの発現量やその発現制御機構における異常の有無、障害を引き起こす分子機構等についての解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請書通り、物品費800,000円、旅費300,000円、人件費および謝金100,000円、その他100,000円とする。 一方で平成24年度は未使用額として135,721円が生じたが、これについては、評価の優先性から、平成24年度は予定していた電子顕微鏡による微細構造解析を行わず、代わりに25年度に実施予定であった血中ホルモン濃度測定の一部を行ったため、その差額によるものである。この未使用金は平成25年度に繰り越し、物品費として計上する。 平成25年度の物品費のうち、血中ホルモン測定については上述の通り一部解析を終えており、また追加実験の準備もすでに整いつつあるため、その分の予算と繰り越した予算を合わせて、平成25年度に新たに実施する実験に必要な試薬などの購入予算とする。
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Research Products
(6 results)