2012 Fiscal Year Research-status Report
ブーム学の基盤構築:経済主体間の創発メカニズムの解明
Project/Area Number |
24710156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水野 貴之 筑波大学, システム情報系, 准教授 (50467057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経済物理学 / ビックデータ / データサイエンス / Webサイエンス |
Research Abstract |
ニュース、不動産、企業財務、家電商品の価格に関する大規模コンテンツデータから自然言語処理と統計解析により、これらに関するブーム現象について固有の統計性の抽出をおこなった。 1)ニュース等の情報が引き起こす金融市場のブーム発生メカニズムの解明では、自然言語処理の手法の1つであるLDAを用いてニュースをカテゴリに分類することにより、金融市場が反応しやすいニュースカテゴリを特定した。本成果は、資産価格に関する外生的な変動リスクの算定に役立つ。 2)不動産や地価ブームを引き起こす地域間相互作用の解明では、米国における不動産価格の空間的なバラツキに着目し、物件の差し押さえ率が将来高くなる地域では、不動産価格の空間的なバラツキが大きいことを見つけた。これにより、地域毎のバブルの度合いを測ることが可能になった。 3)産業界のブームを引き起こす企業間のつながりの解明では、企業成長を、「社会全体の要因」と「個別企業の要因」と「取引先などの関連企業からの要因」に分離することに成功した。これにより、企業間のつながりを利用した経済政策が有効であることを見出した。 4)ブーム期における過当競争の解消メソッドの構築では、これからさらなる増加が見込めるインターネット市場における、消費者の購入店舗の選択行動と店舗の値付け行動の特徴を調査した。消費者の店舗に対する好みは多岐にわたり、最安値の1.5倍程度の売価の店舗でもしばしば購買が発生する。また、そのような消費者の数に比例して、そのような価格を提示する店舗が複数存在する。これらの特徴の発見は、家電市場の価格変動をシミュレートするモデルの構築に役立つ。そのモデルは、価格安定化のための市場のルール作りに活躍することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、研究代表者がこれまでに集めたブーム事象の大規模コンテンツデータから、様々な「ブーム」の発生と消滅現象に共通する経済主体間の創発メカニズムを解明し、さらにブームという非常時における社会科学「ブーム学」を構築するための研究基盤を確立することにある。 この目標を達成するために、4つのステップをこなす必要がある。まず、第一にブーム現象に固有の統計性の抽出、第二に統計性を生み出すメカニズムの解明、第三にメカニズムを形成する経済主体間の相互作用の解明、第四にブーム現象をシミュレートするモデルの構築である。各ステップの達成に1年間を計画している。 平成24年度は第一ステップを達成した。さらに、不動産バブル、家電の小売市場のバブルの研究については、第二ステップまで進展している。このような進展状況を考慮し、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果を受けて、当初の計画通り、平成25年度は平成24年度の研究によって明らかにしたブーム現象に固有の統計的な特徴を生み出すメカニズムを明らかにする。また、平成26年度は、平成25年度の研究によって明らかにしたブーム現象を生み出すメカニズムがどのような経済主体間の相互作用により形成されるのか、その形成過程を明らかにし、平成27年度は、ブーム現象をシミュレートするモデルを構築することによって、平成26年度の研究によって明らかにしたブーム現象を引き起こす経済主体間の相互作用を制御する方法を探り、過当な競争・値崩れ・高騰などブーム現象の弊害を防ぐ方法を提案していく。平成25年度の具体的な推進方策は以下である。 1)ニュース等の情報が引き起こす金融市場のブーム発生メカニズムの解明では、ニュースの種類によって金融市場の参加が取る取引戦略の同調行動と値動きの関係性を解明する。 2)不動産や地価ブームを引き起こす地域間相互作用の解明では、近隣の物件間の価格変動の相互相関の強さを計り、バブル発生期・中期・崩壊期において、相互相関の強さ及び相関が発生する空間的な距離について明確にする。 3)産業界のブームを引き起こす企業間のつながりの解明では、ブーム期の企業間取引ネットワークに流れるお金と物と技術の流量に着目し、ネットワークを介した連鎖的な企業の成長と企業間の業績格差が広がるネットワークの仕組みを解明する。 4)ブーム期における過当競争の解消メソッドの構築では、家電の小売市場に着目し、値崩れ発生を引き起こす店舗間の値下げ競争や新規店舗の参入・退出のメカニズムを明らかにする。 各種学会、国際学会、学術論文にて研究成果の報告をおこなう。最新の出来事に対応させるためにデータベースのアップデートをおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:平成24年度25年度に起きたブーム現象について関連するデータをアップデートするための費用として65万円を、データ保存のためのハードディスク等の消耗品の購入に15万円を計画している。 旅費:共同研究者との研究打合わせ旅費、2回の国内学会旅費、1回の国際学会旅費として35万円を計画している。 人件費・謝金・その他:学会参加費やデータ整備の補助に掛かる費用として9万円を計画している。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Social Networks in Business News2012
Author(s)
Takayuki Mizuno, Ryouhei Hisano, Takaaki, Ohnishi, Tsutomu Watanabe
Organizer
17th Annuak Workshop on Economic Heterogeneous Interacting Agent
Place of Presentation
University of Pantheon-Assas(Paris)
Year and Date
20120621-20120623
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