2013 Fiscal Year Research-status Report
ブーム学の基盤構築:経済主体間の創発メカニズムの解明
Project/Area Number |
24710156
|
Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
水野 貴之 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (50467057)
|
Keywords | 経済物理学 / ビッグデータ / データサイエンス / ウェブサイエンス |
Research Abstract |
金融ニュース,不動産価格,企業財務,家電商品のブーム現象に関して,これらに関連するビッグデータの統計解析と現象のモデル化を通じて,平成24年度の研究によって明らかになったブーム現象に固有の統計的な特徴を生み出すメカニズムを調査した. 1)ニュース等の情報が引き起こす金融市場のブーム発生メカニズムの解明では,資産価格に関する外生的なショックが発生したときの市場参加者のインパルス応答を分析した.応答関数は外生的ショックの新規性と話題性を変数に持つ関数であることが明らかになった.本成果は,資産価格に関する外生的な変動リスクの算定に役立つ. 2)不動産や地価ブームを引き起こす地域間相互作用の解明では,ブームが発生した地域では空間的な価格の相互作用が,市場参加者が近視眼的になることにより小さくなることを見出した.相関が有意に働く空間的な距離によってブームの度合いを測ることができ,不動産ブームのナウ・キャストが可能になった. 3)産業界のブームを引き起こす企業間のつながりの解明では,企業のインプットとアウトプットのメカニズムに注目し,大企業の基本的な生産関数がコブ・ダグラス型に従うことを実証的,理論解析的に明らかにした. 4)ブーム期における過当競争の解消メソッドの構築では,家電オンライン市場における価格変動の統計的な特徴を生み出す,消費者の店舗に対する選好と,店舗間の競争の主な特徴を明らかにした.それらの特徴を持つ消費者エージェントと店舗エージェントで構成されるオンライン市場モデルを,金融市場でよく使われるオーダーブックモデルを応用し導入した.このモデルはオンライン市場の価格変動をシミュレートできるため,価格安定化のための市場のルール作りに利用できる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は,研究代表者がこれまでに集めたブーム事象の大規模コンテンツデータから,様々な「ブーム」の発生と消滅現象に共通する経済主体間の創発メカニズムを解明し,さらにブームという非常時における社会科学「ブーム学」を構築するための研究基盤を確立することにある. この目標を達成するために,4つのステップをこなす必要がある.まず,第一にブーム現象に固有の統計性の抽出,第二に統計性を生み出すメカニズムの解明,第三にメカニズムを形成する経済主体間の相互作用の解明,第四にブーム現象をシミュレートするモデルの構築である.各ステップの達成に1年間を計画している. 平成25年度までに,ニュースと金融市場,不動産,企業財務に関しては第二ステップまで達成した.家電の小売市場に関しては第四ステップまで進んでいる. このような進展状況を考慮し,当初の計画以上に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度と平成25年度の研究成果を受けて,当初の計画通り,平成26年度は平成25年度の研究によって明らかにしたブーム現象を生み出すメカニズムがどのような経済主体間の相互作用により形成されるのか,その形成過程を明らかにし,平成27年度は,ブーム現象をシミュレートするモデルを構築することによって,平成26年度の研究によって明らかにしたブーム現象を引き起こす経済主体間の相互作用を制御する方法を探り,過当な競争・値崩れ・高騰などブーム現象の弊害を防ぐ方法を提案していく.平成26年度の具体的な推進方策は以下の通りである. 1)ニュース等の情報が引き起こす金融市場のブーム発生メカニズムの解明では,情報によって市場参加者の同調行動が,どのように形成されて行くのかを調べ,ブームが発生するメカニズムを解明する. 2)不動産や地価ブームを引き起こす地域間相互作用の解明では,地価を決定する主な要素の1つである人口に着目し,場所に対する選好と人口動態のメカニズムから地価ブームを調査する. 3)産業界のブームを引き起こす企業間のつながりの解明では,お金や物や技術が流れる企業間取引ネットワークの変遷を調査する.また,企業間での分業と生産にかかるエネルギー量についても議論する. 4)ブーム期における過当競争の解消メソッドの構築では,値崩れ発生を引き起こした店舗に注目し,どのような属性の店舗が値崩れを引き起こすのか,なぜその店舗がこのような販売戦略をとるのかについて明らかにする. 各種学会,国際学会,学術論文にて研究成果の報告をおこなう.最新の出来事に対応させるためにデータベースのアップデートをおこなう.
|
Research Products
(21 results)