Project/Area Number |
24710259
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 満 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (20589858)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | オートファジー / ルシフェラーゼ / 発光 |
Research Abstract |
本申請研究では, 細胞の分解機構の一端である「オートファジー」に対して, 生きた細胞内にて検出する方法を開発する.検出する手法としては, 発光タンパク質ルシフェラーゼを用いたタンパク質再構成法によって行う. タンパク質再構成法は, 2断片に分割したルシフェラーゼが接近すると, 再び発光活性が回復する原理であり, ルシフェラーゼ2断片にそれぞれ各種オートファジーに関するタンパク質を連結させることで, オートファジー下でのタンパク質間相互作用を検出する事が可能となる. 本年度は, ルシフェラーゼの断片化および各種オートファジー関連因子との融合化を実現する, ほ乳類細胞発現ベクターを作製した. 既に最適な切断位置が明らかとなっているヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼのそれぞれの断片遺伝子を, PCRおよびライゲーション法を用いてベクター上でオートファジー関連遺伝子と連結した. オートファジー関連遺伝子としては, LC3, DFCP-1, ATG14等を用いた. 作製した発現ベクターは配列の確認を行ったのち, 大腸菌を用いて大量に精製した. 精製した発現ベクターをヒト培養細胞に導入したのち, その発光値を確認した. オートファジーは培地の栄養条件が劣悪になった場合に誘導されることから, 血清およびアミノ酸を除いた培地に置き換えて培養を行った. その結果, 大きく発光値が上昇した. ただし, 貧栄養下では細胞自体の活性も低下しているため, 内在コントロールとして, ウミシイタケ由来ルシフェラーゼの全長を同時に導入することにした. ウミシイタケ由来ルシフェラーゼの発光値でプローブの発光値を補正した結果, やはり貧栄養下でプローブの発光値が上昇していることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の目的であった, タンパク質再構成法を用いたオートファジーに対するルシフェラーゼ発光プローブの作製に着手した. ルシフェラーゼの種類および分割位置を検討した結果, 長波長且つ高い発光強度をもつヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼを選択した. このルシフェラーゼ遺伝子の断片とオートファジー関連遺伝子を融合させた発現ベクターコンストラクトの完成に至った. 当初は, オートファジーの主要な膜成分であるオートファゴソームの形成に対して, 膜成分である「LC3」および, オートファゴソームがリソソームと融合するタイミングを捉えるためリソソーム膜上の「LAMP-1」をターゲットと定めプローブの作製を行った. しかしながら, オートファジーでの後期ステップの検出だけでは, オートファジーの全容を捉えるには不十分であるとの理由から, オートファジー初期における膜タンパク質DFCP-1や, シグナルタンパク質ATG14などもターゲットとして導入する事とした. また, タンパク質の過剰蓄積に依る影響は本来の細胞のバランスを損なう恐れがあることから, 内在のタンパク質へ結合するペプチド配列を選抜して, 影響の少ないプローブの作製も同時に進めている. 実際に作製した発光プローブは, LC3とLAMP-1のペアも, その他の各種組み合わせも, 細胞に導入した結果発光を生じた. さらにはオートファジーを誘導する各種刺激に対しても明確に反応を示した. 従い当初の予定通り, プロトタイプとなる発光プローブの開発を実現した. マウス等個体への導入に関しては, プローブのキャラクタライゼーションが完全に出来ていないことと, 改良の余地がみられることから, 次年度以降に行う.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は, まずプローブの改良を行う. 現時点でのプローブの発光強度は最低限の感度を満たしているが, 細胞イメージングなどの用途には向いていない. また, 細胞内環境の変化に発光反応が影響を受け易い. そこで, 発光強度が強く且つ安定しているNanoLucルシフェラーゼを導入する. ただしNanoLucは再構成法上での最適な切断位置が決定されていないため, 切断位置の決定から行う. 位置の予測に関しては, 先行論文を参照し, アミノ酸配列の特徴から候補を選出して随時確認する. 決定した切断位置でNanoLucを分断し, オートファジー関連遺伝子と融合させて再度発光プローブを作製する. プローブが完成次第, 実際に発光値を計測するとともに細胞観察を行い, オートファジーの進行とともにプローブの凝集等, 一般的なオートファジーの特徴を呈するかどうか確認を行う. NanoLucをベースとしたプローブが完成した場合, 長時間モニタリングを行い, 各種細胞活動におけるオートファジー活性の変遷を追う. 具体的には当初の予定通り, 細胞周期および概日リズムに着目する. それぞれを蛍光タンパク質もしくは異なる波長のルシフェラーゼでモニターすることで, オートファジーと同時に計測する. 続いて, 細胞死アポトーシスとの関連性を調査する. 胚発生や細胞老化におけるアポトーシス過程において, オートファジーとの関係性をそれぞれの現象を同時に計測する事で解析する. 最終的にはマウスへの導入を行う. ウイルス等の作製によってマウスへの導入系を確立する. マウスの肝臓や皮下組織へ発光プローブを導入し, 飢餓状態や炎症反応においてオートファジーの活性を個体イメージングする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は, まずプローブの改良を行う. 新規にNanoLucを導入したプローブを作製するため, PCRに用いる酵素等の試薬代, プライマーの外注代を予定している. さらにベクターへの導入およびベクターの大量精製においては各種キットを購入して行う. 細胞実験では, 細胞継代用の培地, 血清, 各種試薬, ディッシュ等の予算を計上する. 細胞への遺伝子導入として遺伝子導入試薬を購入する. 細胞の発光観察及び, 各細胞活動の観察は顕微鏡を使用して行うため, 顕微鏡関連機器, 消耗品の購入を予定する. マウスを用いた個体イメージングでは, ウイルス作製用のキットおよび培地代, さらには実験用マウスの購入費を計上する.
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