2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720070
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
沼田 里衣 神戸大学, その他の研究科, 研究員 (10585350)
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Keywords | コミュニティ音楽療法 / 臨床音楽学 / コミュニティ・アート / 即興音楽 / アウトサイダー・アート / 社会参加 / 障害者 |
Research Abstract |
前年度の研究成果として、個々の価値観や技術の差が大きいコミュニティにおいて、即興表現をすることが積極的な互いの差違の評価につながっていることが明らかになったが、そうした成果を元に、今年度はそのコミュニティ創成のための様々な条件を整理した。その内容は、8月に日本音楽療法学会と3rd Asia Pacific Regional Conference of International Association for the Scientific Study of Intellectual and Developmental Disabilitiesにおいて発表した。 また、実践上の課題として、知的障害者とその保護者、音楽家、音楽療法家によるグループがイギリスの三領域(即興音楽、音楽療法、コミュニティ音楽)における団体との交流を行う事業を実施し、表現や運営方法でどのような変化が可能となるかを実験した。それぞれの場において、障害を持つメンバーの異なる表現行為が見られ、障害者との音楽表現を介した関係性の構築の方法について、メンバー自身が考える良い機会となった。帰国後は、メンバーが交代でワークショップ進行の仕切りを担う状況が生まれ、コミュニティ創成の課題であったリーダーが育ちつつある。また、その成果の一つとして、準備から帰国後まで半年以上に渡ってNHKより取材を受け、ドキュメンタリーとして10月末、12月末~1月初めまで計10回放送された。成果報告については、12月6日に神戸大学で開催された第3回「共創」社会研究会で「障害のある人と音楽家による即興音楽―3領域を巡るイギリスツアーを終えて」と言うタイトルで発表し、さらに一般を対象として12月8日に神戸大学で「UKプロジェクト報告会」を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目標は、地域社会で即興音楽活動を基軸とした障害者を含むコミュニティ創成について、地域の障害者とその保護者や介護者、音楽愛好家と議論し、意見交換しながら方法論を導き出すことである。本年度は、既存のコミュニティからの条件の分析を進めることが出来たが、新たな組織を立ち上げ、その条件の検証を行うまでには至っていない。その遅れの原因は、既存のコミュニティにおいて、イギリスツアーの実施に関連してNHKの取材が入り、打ち合わせや会内部の意見調整等の準備や様々な対応に忙殺された為である。NHKの取材に対しては、成果の社会的還元と言う意味では非常に重要であると考え、積極的に行った。一方で、他の事例との比較や関連領域の理論家・実践家との意見交換を行うことにより、最終年度の課題である理論化に向けての考察を進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
実践上の課題として、知的障害者と音楽愛好家のための地域に根ざしたコミュニティ創成を新たに行い、その過程を調査する。その際、既存の調査対象であるコミュニティから得られた条件を抽出し、コミュニティ創成のための要件をさらに精査する。成果のまとめとして、参加者が語る表現を表すイディオムや採譜されたものを元に、最終的にモデルの構築を目指す。また、勉強会の参加やシンポジウムの実施により意見交換を進め、学術的な見地からの理論化を行う。実践に根ざした研究であるため、既存のコミュニティおいても活動の維持・発展のための組織運営について議論を続け、その様子を観察することにより、実践と理論化の作業の往復は継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、新たな組織を立ち上げ、コミュニティ創成のための条件の検証を行う予定であったが、遅れが生じた。その遅れの原因は、既存のコミュニティにおいて、イギリスツアーの実施に関連してNHKの取材が入り、忙殺されたためである。取材は半年以上にわたり、ディレクターとのミーティング、会内部の意見調整等の様々な対応に追われた。NHKの取材に対しては、成果の社会的還元と言う意味では非常に重要であると考え、積極的に行った。 次年度は、新たなコミュニティ創成プロジェクトを行い、まとめて学会発表と論文発表を行う。また、本事業の成果発表とともに、海外からの研究者を招聘し、今後の日本における障害のある人とない人のためのコミュニティ創成に際してどのようなあり方が望ましいのか、意見交換を行う予定である。
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