2012 Fiscal Year Research-status Report
近世後期・近代初期における薩摩藩の文事および薩摩人脈の解明
Project/Area Number |
24720100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
亀井 森 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (40509816)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 台湾大学図書館 |
Research Abstract |
本研究は近世後期から幕末・近代初期における文芸の中で特に和歌に焦点を絞り、京都の堂上家と島津家との関係を一つの軸とする和歌史を解明し、京坂の歌壇から近代初期の御歌所へと繋がる薩摩藩歌人の文事・教育・人脈を解明することを目的とした。 今年度は資料収集および研究環境を整備することに重点を置き、江戸時代の一次資料購入やデータ処理のためにノートPCを購入した。このように次年度以降の精査に備えるとともに、台湾大学図書館所蔵『長沢伴雄自筆日記』24冊の出版準備を進めた。当該年度に発表した論文として以下の単著2点を挙げる。 「近世後期『枕草子』研究一斑」(「雅俗」第11号,pp.30-44,雅俗の会,平成24年6月)、「紀州藩蔵書形成の一側面―伴信友と長沢伴雄―」(「アジア遊学」155号,pp.180-189,勉誠社,平成24年7月) 前者は近世後期に行われた『枕草子』研究の一端を解明したものである。台湾大学長澤文庫に残る資料と日本国内での調査を合せて、従来漠然としていたこの時期の『枕草子』研究について、資料の相互貸借や書入れ書写の過程を詳細に論じ、近世後期の文事の解明を一歩進めることができたと考えている。後者は同様に台湾大学所蔵の資料を用い、紀州藩の蔵書蒐集事業を通じて知遇を得た紀州藩士長沢伴雄と小浜藩士伴信友との学問的な交流を浮き彫りにした。これによって同時代の国学者たちの学問のやり方や資料収集の様相を伺うことができたと考える。 なお当該年度に『枕草子春曙抄』を購入しているが、これは前者論文に取り上げた資料で研究代表者未見の自筆書入れ資料であったが、当該年度の補助金によって購入することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は大きく二つの柱で構成されている。そのうち一つに「台湾大学図書館長沢文庫蔵『長沢伴雄自筆日記』の公刊」があるが、当該年度に5分冊中の第1巻を刊行する予定であった。その出版が遅れ、第1巻を平成25年度に出版する予定である。出版が遅れた理由として、研究代表者の目論見に反して資料の判読が非常に難しく、また内容的にも人物関係・国学思想・歴史・有職故実など多岐にわたり、専門性もより高くなっている。 このことが解読に時間が要している理由として挙げられる。 また当該年度の実績としては薩摩藩関係の論文を発表することができなかった。これは研究計画に沿った状況ではあるが、資料の収集および関西での調査が進まず次年度以降に当該年度の未調査分を行う必要がある。また東京における調査も本格的に始められず、次年度以降の課題として残っている。 以上の2点から現在までの達成度としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は大きく二つの柱で構成されている。そのうち一つに「台湾大学図書館長沢文庫蔵『長沢伴雄自筆日記』の公刊」があるが、当該年度に5分冊中の第1巻を刊行する予定であった。その出版が遅れ、第1巻を平成25年度に出版する予定である。この遅れを取り戻すために難読箇所については国内での精査とともに台湾大学での原本確認を積極的に行う予定である。難読箇所については解読に高橋昌彦福岡大学教授に助言を受け、資料の正確性を確保する。 また当該年度の実績としては、もう一つの柱である薩摩藩関係の論文を発表することができなかった。これは研究計画に沿った状況ではあるが、資料の収集および関西での調査が進まず次年度以降に当該年度の未調査分を行う必要がある。研究計画で述べたように、平成25年度は関西における調査を重点的に行う。まず天理大学附属天理図書館に収められる『高崎正風日記』および『高崎先生詠草』は薩摩藩人脈や文事・教育を窺うことのできる第1級の資料であるが、先行研究においては取り上げられる事が少なく、本研究によって近代和歌史研究へ新資料を提供することができると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一に、遅れている台湾大学との出版計画を早急に回復し、『長澤伴雄自筆日記』第1巻の刊行を行う予定である(11月刊行予定)。そのために難読箇所の原本確認および打合せ等で台湾大学図書館へ数度赴く必要がある。出版・印刷にかかる費用は台湾大学側が負担するが、現地での原本確認が不可欠なための台湾大学での調査を行う。そのための外国旅費を主な必要経費として計上する。 また前述の国内での精査のために高橋昌彦福岡大学教授へ助言を受けるために福岡への出張が必要となる。そのための費用を旅費として計上する予定である。 さらに今後の研究の推進方策において述べたように、当該年度において関西での調査を重点的に行いたいと考えている。当該年度の未調査分に加え、京都市歴史資料館および天理大学図書館へ出向いて調査を行う必要がある。この関西での資料収集、特に天理大学での調査は本研究の核となると考えており、幕末明治の薩摩藩の文事解明には必要不可欠で ある。実地踏査は年間3回各3泊4日で応募者単独で行う。そのための国内旅費および資料複写などを主な必要経費として計上する。 なお鹿児島における調査はおおむね鹿児島市内で行うが、大隅半島へ調査に赴く必要性が生まれており、鹿児島市内から大隅半島への旅費および資料複写などを必要経費として計上する計画である。
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Research Products
(3 results)