2013 Fiscal Year Research-status Report
近世後期・近代初期における薩摩藩の文事および薩摩人脈の解明
Project/Area Number |
24720100
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
亀井 森 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (40509816)
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Keywords | 国文学 / 近世文学 / 国学 / 和学 / 長沢伴雄 / 台湾大学図書館(中華民国) / 薩摩藩 / 高崎正風 |
Research Abstract |
本研究は近世後期から幕末・近代初期における文芸の中で特に和歌に焦点を絞り、京都の堂上家と島津家との関係を一つの軸とする和歌史を解明し、京坂の歌壇から近代初期の御歌所へと繋がる薩摩藩歌人の文事・教育・人脈を解明することを目的とした。 25年度研究業績としては台湾大学との共同出版計画である『長澤伴雄自筆日記』第1巻を刊行した(10月刊行)。これによって本研究の実績として大きな一歩を記すことができたと考える。計画では第5巻まで刊行予定である。当初の研究計画よりも時間がかかっているが、資料の精度を落とさずにペースを上げていくつもりである。 また12月には鹿児島大学附属図書館貴重書公開(於鹿児島大学附属図書館)「島津氏と近衛家の七百年」図録の解説項目を分担執筆した。これによって近衛家と島津家の関係を再確認し、幕末の宮中と島津家との密接なつながりについて一貫した関連性を見出すことができた。 また26年3月には天理大学図書館へ出向いて調査を行った。これによって従来報告のなかった薩摩藩士高崎正風の晩年の日記を調査することができ、26年度に論文発表することを目的としている。本研究の核と位置づけていた天理大学での調査を行うことができたことは本年度の成果である。今後は遅れている京都での実地踏査をふやす必要性を感じている。実地踏査は年間3回各3泊4日で応募者単独で行う。そのための国内旅費および資料複写などを主な必要経費として計上する。 本研究の成果として今後、前述した鹿児島大学附属図書館貴重書公開を計画しており、幕末から明治にかけての歌人の著作等資料収集を必要経費として計上する。また鹿児島市内から大隅半島への旅費および資料複写などを必要経費として計上する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は大きく二つの柱で構成されている。そのうち一つの柱である「台湾大学図書館長沢文庫蔵『長沢伴雄自筆日記』の公刊」について、当該年度に5分冊中の第1巻を刊行したが、なお、計画からは遅れている。出版が遅れた理由として、研究代表者の目論見に反して資料の判読が非常に難しく、また内容的にも人物関係・国学思想・歴史・有職故実など多岐にわたり、専門性もより高くなっている。このことが解読に時間が要している理由として挙げられる。 また24年度は2つめの柱である薩摩藩関係の研究が遅れていたが、貴重書公開や天理大学等への調査を行うことで、研究の蓄積ができてきている。それでもまだ論文を発表するに至っていないため、遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の大きな柱である「台湾大学図書館長沢文庫蔵『長沢伴雄自筆日記』の公刊」について、研究計画および台湾大学との出版計画にも遅れが生じている。25年度に5分冊中の第1巻を刊行したが、なお、計画からは遅れている。そこで25年度に台湾大学側と協議し、2年に1冊のペースに改めることで、精度を維持しつつ出版することを決めた。26年度は6月に台湾大学で国際シンポジウムの発表がきまっている。シンポジウム出席後、台湾大学での調査も計画しており、長沢伴雄に関する業績は一定のレベルに達することができると考えている。 また26年3月に調査を行った天理大学での調査によって得られた知見を基に近代における薩摩人脈に関する論文を執筆したいと考えている。執筆には調査の手薄である京都での調査を重点的に行っていきたいと考えている。
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