2012 Fiscal Year Research-status Report
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24720101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
木越 俊介 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (80360056)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 出版 / 造本 / 歌舞伎 / 読本 |
Research Abstract |
本年度は、計画通り、大阪府立中之島図書館、東京大学国語研究室(大総文庫)、阪急池田文庫などに赴き、書誌調査を行った。対象となる作品の全諸本を網羅的に、というわけにはいかなかったが、これまでの研究成果を含め、おおよその善本を確認することができた。その結果、絵入根本の成立において重要な時期は享和年間にあることが判明し、具体的な造本様式の特色について整理した。 こうした調査結果を受け、口頭発表を行った。まずは、8月27日に、中国・ハルピン(ハルピン工業大学)におけるワークショップ「日本文学の中の外国文学、外国文学の中の日本文学」において、「絵入根本の造本─発生から定着まで」と題し発表した。さらに、これをブラッシュアップしたものを、12月9日に、「絵入根本の造本について─享和年間を中心に」と題し、絵入本ワークショップV(於・関西大学)において発表した。 また、本研究の副産物として、読本と演劇の融合作品として山東京伝作『忠臣水滸伝』についても目配りした結果、中国・西安大学における日中共同シンポジウム「日本と中国、中国と日本─文学からの接近」において「『忠臣水滸伝』の白話と日本語の遊び方」と題し発表を行った(9月1日)。 以上、研究課題に対し、核となる問題は本年度においてかなり明確にすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査に関しては、予定通りではあったが、予定以上のことを行うことは時間の制約上困難であった。ただし、この点は想定済みであったので、計画調書に記した通り、下準備などを十分に行った結果、スムーズに進行した。 調査結果の整理に関しても、逐一データ化していったことにより問題なく進行した。 研究に関しては、三度の口頭発表を行うことができ、そのうち二回は海外での発表であったことは、予想以上の成果であったといえよう。また、各発表で、他の研究者から様々な示教を受け、自説を補足したり、新たに目配りすべき資料などを知ることができた。 以上の理由から、全体として、おおむね順調に進展しているとみなすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の重点調査機関として、東京大学の秋葉文庫、大総文庫と前年度に引き続き大阪府立中之島図書館、阪急池田文庫に加え、日本大学佐藤文庫、西尾市立岩瀬文庫を予定している(これらは、予備調査により、後刷本が多いことが予想されるため、本研究では優先的な扱いをしなかった機関である)。今後は、読本、名所図絵の様式との比較を行う。さらに、ここまでの調査で明らかになったことを、論文としてまとめる準備を行う。また、成果物として、ウェブ上に「享和・文化期絵入根本年表」を発表し、適宜補訂していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、重点調査機関として、東京大学の秋葉文庫、大総文庫と前年度に引き続き大阪府立中之島図書館、阪急池田文庫を予定している。 網羅的な調査は途上であるものの、課題に対するおおよその見取り図はできたので、これに基づき、絵入根本の様式的な典型を抽出し、特にジャンル成立期の諸様式のあり様をくまなく洗い出し、ジャンルとしての史的展開についての研究を行う。 また、これまでの調査結果に、さらなるデータを補足していくことで、より説得力のある見解を示すことができると思われる。それをもとに、後半に論文を執筆し、翌年度に公にする予定である。
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