2012 Fiscal Year Research-status Report
大学講義をデータとした「わかりやすい」日本語の研究
| Project/Area Number |
24720229
|
|---|
| Research Institution | Gunma University |
|---|
Principal Investigator |
俵山 雄司 群馬大学, 国際教育・研究センター, 講師 (30466685)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
| Keywords | わかりやすい日本語 / ティーチャー・トーク / フォリナー・トーク |
|---|
| Research Abstract |
本研究は、「わかりやすい日本語」について調査・研究を行っている。具体的には、大学における留学生対象の講義データの分析から、外国人にとっての「わかりやすい日本語」の特徴をあぶりだし、最終的には、ここで得られた知見を反映した「わかりやすい日本語」のマニュアルやリストの作成を行う。これは、定住外国人と地域の日本人、留学生と大学教員とのスムースなコミュニケーションを目的としたものである。
平成24年度は、以前に収集し、文字化済みの留学生対象の専門科目などのデータを整理し、分析に適した形に加工した。また関連資料や書籍を収集し、分析方法について調査した。この作業の過程で、本研究のデータの特徴をさらに浮き彫りにするために、大学教員でない日本人による講義との比較が必要かつ有効ではないかと考えた。そこで、以前に収集した製造業のビジネスマンによる講義を追加データとして用いることとし、これの整理と加工にも着手した。そのため、予定していた日本人向けの専門科目の音声データと映像データの収集は、次年度に回さざるをえなくなった。
初年度の研究の成果の一部は、「第5回談話分析コロキアム」で発表した。ここでは、大学教員とビジネスマンの講義の比較・分析を、語彙の調整行動に絞って行った。両者に見られた調整行動として「繰り返し」「言い直し」「語義説明」がある。大学教員の「語義説明」のうち、「専門語」についてのものは、特徴的な構造（専門語の導入→明白な提示→解説→再提示）が複数現れた。これについては、何度も語を提示することで印象付ける効果、解説の開始部分・終了部分を提示することでまとまりを作り出す効果がある可能性を指摘した。講義に慣れている大学教員は、これを無意識に使用していると思われるため、この構造を講義者に意識させる項目を「わかりやすい日本語」のマニュアルやリストに盛り込むことが有効であると考える。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要にも記したが、データを整理・加工、分析方法の調査の過程で、本研究のデータの特徴をさらに浮き彫りにするために、大学教員でない日本人による講義との比較が必要かつ有効ではないかと考えた。そこで、以前に収集した製造業のビジネスマンによる講義を追加データとして用いることとし、これの整理と加工にも着手した。そのため、予定していた日本人向けの専門科目との音声データと映像データの収集は、次年度に回さざるをえなくなった。以上が、やや遅れていていると考えた理由である。
|
| Strategy for Future Research Activity |
まずは、関連資料の読解を終え、分析の観点を確定させることに注力する。そのうえで、初年度にやり残した日本人向けの専門科目の音声データと映像データの収集を実施する。
その後、本格的な分析に入るが、ある要素を「わかりやすい日本語」として認定する根拠を明確にするため、その要素が、本当に留学生の講義理解を助けるかどうかを明らかにする調査を行う必要があると考えている。具体的には、講義を聞いている人に対する印象調査もしくは講義の理解度調査などを、データの収集・分析と並行して行うことを予定している。
|
| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に使用できなかった研究費は、専門科目の音声データと映像データの収集や確認のための機器である。具体的には、分析の際に、それを講義者や留学生に聞いてもらい、発話の解釈や印象を確認することを想定している。
次年度は、初年度にやり残したデータ収集と確認を行うことにしているため、音声や動画再生用の機器（CDラジカセ・ノートPC）を購入する。初年度に使用できなかった分の研究費は、計画通りこれに充てることになる。また、研究成果を学会や研究会で発表するための出張旅費、調査協力者（講義者・印象調査協力者）に対する謝金が必要となる。
|
