2015 Fiscal Year Research-status Report
協働的な学習環境におけるモニタリングと日本語読解学習に関する研究
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24720230
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 礼子 東京工業大学, 留学生センター, 准教授 (30432298)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 読解 / 説明 / モニタリング / 協同 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、上級レベルの日本語学習者の読解において重要な理解のモニタリングの働きを促すための学習法として、「他者への説明」が核となる読解活動を提案し、その方法を検討することを目的とする。 説明課題の実践にあたり,CLIL(内容言語統合型学習)の考え方に基づき,内容、言語、思考、協学、という4つの概念を有機的に結び付けることにより教育効果を高めることを目指した。説明課題の実践において,留学生に対応した言語面や思考面におけるスキャフォールディング(足場作り)を行い、その効果を検討した。また、協学面として学習コミュニティを活かしてどのような学びが得られるかについても配慮した。 説明課題としては、本1冊を学生間で分担し、担当箇所をレジュメ形式でまとめて、それをもとに他者に説明するという活動「分担読解」を実施した。授業時の支援としては、CLILで示されているように、重点を置く言語スキルを設定し、授業時に内容と合わせて言語スキルを身につけるようにした。日本語レベルの差を減らし、活動内容への気づきを増やすため、個人作業ではなく協同(ペア)で一つのレジュメを作った。言語スキルへのスキャフォールディングとして、授業内でのレジュメ作成体験、各学習者が持つ「よい説明」の意識化、説明の評価基準作成を行った。分担読解の担当箇所発表の後には、説明者・聞き手とも自己評価を行い,説明技能や内容理解度を評価した。 学習者が学期末に書いた作文から、日本語を通して知識を得て、日本語による理解力・発信力・思考力を高め他の学生と協力して作業を行うことで、多様な考えに気づき、学びにつながったことがうかがえた。協同での作業と振り返りを行うことが、学習者間の意見のやり取りを促進し、有効な学習コミュニティ形成につながったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語授業における「説明活動」を実践する理論的背景として,新たにCLIL(内容言語統合型学習)を導入し,文章理解へのモニタリングの促進という当初の目的(認知面)に加えて,言語スキルや協学面への効果についても検討を進めた。説明活動として行った「分担読解」活動の後に自己省察のために行った自己評価における質問項目についても、実態に合わせて改善を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は産育休のため研究を中断し、平成29年度に研究を再開する予定である。計画の最終年度となる平成29年度は、当初計画の最終年度に計画していた実験的授業におけるデータ収集と検証を行う。実験的授業において「説明活動」を継続的に実施し、事前事後での読解材料への理解度の深まりが見られるかどうか、学習者のモニタリングへの意識に違いがみられるかどうかについて検討する。 さらに、平成26・27年度に実施した実験的授業において収集した、読解材料に関する理解度測定課題の内容分析が残っているため、平成29年度に引き続き分析を行う計画である。
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Causes of Carryover |
平成25年度に産育休のため1年研究を中断し、その間も研究費が支給されたため、研究費はすでに全額支給済みであり,その時期の研究費が残っている。また,研究期間を1年間延長したため、あと1年分の研究費として利用するための次年度使用額が存在する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画の最終年度に実施する予定の研究計画が残っているため、当初の計画に沿った形で未使用額を執行予定である。
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Research Products
(1 results)