2012 Fiscal Year Research-status Report
英語学習者のテクストにおける言語学的特徴とライティング力の関係に関する研究
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24720281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gifu City Women's College |
Principal Investigator |
小島 ますみ 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 講師 (40600549)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ライティング評価 / 語彙の豊かさ |
Research Abstract |
「英語学習者のテクストにおける言語学的特徴とライティング力の関係に関する研究」というテーマで研究を行ったが,24年度は特に語彙の多様性指標の妥当性検証を行った。語彙の多様性を量的に表す指標は,母語習得,第二言語習得等の分野で,語彙の発達指標や言語全体の習熟度指標として用いられてきた。しかし,指標が学習者の習熟度を反映するのかという妥当性研究は欠けていた。 本研究では,Kane (2006) の論証に基づくアプローチに従い,洗練された語彙の多様性指標とされるD, HD-D, MTLDの妥当性検証を行った。Kane (2006) によると,妥当性検証は3段階で行われる。まず,対象とする領域を決める。次にテスト得点の解釈と使用,それらの前提・推論を明確にすることで,解釈的論証を行う。最後に,複数の分析と実証をとおし,解釈的論証をさまざまな観点から評価することで,妥当性の論証を行う。本研究では,小島(2011) で収集した日本人英語学習者60人の書いた120のエッセイを対象に,指標の一貫性・安定性や,エッセイとは別に行った2種類の語彙テストとのスコアの相関,習熟度の明らかに異なる2群を区別するかなどの観点から,多面的に指標の妥当性を検討した。結果より,MTLD, D, HD-Dは学習者の語彙発達をある程度反映していると考えられるが,スコアからより一般的な言語発達を解釈することは妥当ではない可能性が示唆された。 また,上記語彙の多様性指標と小島(2011)で提案したSほかの頻度表に基づく語彙の洗練さ指標の妥当性比較を行った。結果より,語彙の多様性の観点では,習熟度の明らかに異なる英語学習者群が書いたエッセイを区別しなかったのに対し,語彙の洗練さの観点では2群を区別したことから,語彙の洗練さは語彙の多様性より,書き手のメンタルレキシコンや言語習熟度をより良く反映することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,主に以下の3点であった。 1. 2種類の語彙の豊かさ(語彙の多様性,語彙の洗練性)はライティングの評価をどの程度予測するのか,比較・検討を行う。 2. 語彙の豊かさとライティング評価の関係が,学習者の語彙力発達とともにどのように変化するのか調査する。 3. 語彙の豊かさを含めた複数の言語学的特徴とライティング評価の関係を調査し,ライティング力を構成する言語学的要因のモデルを提案する。 24年度は,小島(2011)で収集した120のエッセイについて,語彙の多様性指標(TTR, D, HD-D, MTLD)と語彙の洗練性指標(S, LFP, P_Lex, Advanced Guiraud)を比較し,語彙テストとの相関や,明らかに熟達度の異なる2群を区別するかなどの調査を行った。したがって,研究課題1と2の基盤となる研究ができたと言える。しかしながら,語彙の豊かさ以外の言語学的特徴について,文献研究をあまり行うことができなかったことが反省点である。本研究結果について,第38回全国英語教育学会愛知研究大会(平成24年8月4日)とポーランドで開催されたEroSLA 22 (平成24年9月6日) で研究発表を行った。これらの研究成果の一部を「英語学習者のアウトプットにおける語彙の多様性研究の現在と今後の課題」というタイトルで『岐阜市立女子短期大学研究紀要』第62輯の掲載論文として発表した。また,大修館書店から出版予定の『学習者コーパスハンドブック(仮題)』(共著)5章3節「語彙の豊かさと習熟度の関係」に寄稿した。 以上の理由より,本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の研究成果を踏まえ,25年度は以下の研究課題を推進する。 1. 24年度の研究成果を論文にまとめ,学会誌等に投稿を行う。 2. 2種類の語彙の豊かさ(語彙の多様性,語彙の洗練性)はライティングの評価をどの程度予測するのか,比較・検討を行うとともに,語彙の豊かさとライティング評価の関係が,学習者の語彙力発達とともにどのように変化するのか調査する。 3. 学習者の語彙発達を示すものとして連語の知識に注目する研究が近年増えている。学習者の連語を評価する方法について文献研究を行うとともに,実際の学習者のエッセイで連語がどの程度使用されているのか調査を行う。 4. 初中級の英語学習者のエッセイを収集し,同時に語彙レベルテストを実施する。収集した英文エッセイに対し,内容や構成,総合評価などのライティング評価を行う。評価は,申請者の他に研究協力者が独立で行い,評価者間信頼性を調べる。 5. 得られた研究成果に基づき,大学英語教育学会(JACET)の英語語彙研究会大会等で研究発表を行う。また,小島(2011)で開発した語彙の豊かさ指標Sの分析ツールを開発し,申請者のホームページ上で公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は語彙の豊かさ以外の言語学的特徴について,文献研究をあまり行うことができず,予定していた図書費の支出がなかった。25年度は,学習者の連語を評価することについて文献研究を行う予定である。 25年度の主な研究費は以下である。 ・語彙習得や連語に関する学術図書費 102,000円 ・資料収集や研究成果発表のための旅費 150,000円 ・英文校正費 130,000円 ・CGIプログラム業者委託費 250,000円
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Research Products
(5 results)