2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720331
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
中町 信孝 甲南大学, 文学部, 准教授 (70465384)
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Keywords | イスラーム史 / 文献学 / 自筆本 / 国際情報交換 / イギリス / トルコ / ベルギー |
Research Abstract |
当該年度は3回にわたり海外渡航を行い、研究報告と資料調査とを実施するなど、研究のアウトプットとインプットを手広く行った一年となった。以下に順に概要を記す。 5月10日、11日には、トルコ、ガジアンテプ大学神学部主催の「バドルッディーン・アイニー国際シンポジウム」に参加し、歴史家アイニーの執筆した年代記史料に関する歴史文献学的研究の報告を行った。ガジアンテプ(アラブ名アインターブ)はこの歴史家の出身地でもあり、それにちなむ旧跡も数多く存在したため、それらの現地調査からアイニーのライフストーリーについての新たな知見を得ることができた。なお、この出張は甲南大学の海外出張費を利用しての滞在であるが、内容的に当科研研究と大きく関わるために、実績としてここで報告したい。 8月21日~31日には、大英図書館での資料調査のためイギリスに滞在した。別記の通り、当初この時にエジプトでの資料調査を行う予定であったが、現地情勢の緊迫化を受けて急遽予定を変更してイギリス出張のみを行うことにした。大英図書館では中世アラビア語手稿本を数点閲覧することができた。また、オクスフォード大学ボドリアン図書館の閲覧室を見学する機会を得た。 10月11日、12日にはベルギー、リエージュ大学主催の「アラビア文字自筆本学会」に参加し、「アイニーの年代記執筆過程」と題する報告を行った。世界各国の研究者と知識の交換を行う機会を得ると同時に、リエージュ大が保管する中世歴史家の自筆本などの資料を調査・分析した。 また、日本語での研究成果の発表として、「バドルッディーン・アイニーの職業的キャリア」が刊行予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、エジプト国立文書館に所蔵されたワクフ文書の調査を行う計画を立てており、その計画に基づいて前年度の1月には現地に赴いて同文書館への利用申請書を提出し、許可が下りるのを待つだけの状態であった。ところが7月3日にはエジプト軍の介入により当時のモルシー政権は倒れ、エジプト情勢は急変した。渡航予定日の直前である8月14日にはエジプト暫定政府が、前大統領支持派の市民デモを激しく弾圧し、600人を超える犠牲者が出る事態となり、ここに至って、エジプト渡航をあきらめざるを得なくなった。代わりに滞在したイギリスにおける資料調査ではある程度の収穫はあったものの、当初予定していたワクフ文書の調査は十分に行うことはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度においてキャンセルしたエジプトでのワクフ文書の調査は早急に行う必要があるものの、未だ明確な渡航計画をたてられないままである。そこで、エジプト再渡航の機会をうかがいつつ、ワクフ文書のコピーを数多く所蔵するシカゴ大学付属図書館での再調査を行うこととする。これは初年度に行った同大学での研究滞在の継続という意味も兼ねており、以前に培った米国の研究者、図書館員との交流を維持する目的も果たすことができる。 また、当該年度に行った海外2カ所での学会参加により、新たな研究者との交流を持つことが可能となった。リエージュ大学のF.ボダン教授はアラビア語自筆本研究の専門家であり、なんらかの形での研究協力、知識交換を継続する予定である。
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