2013 Fiscal Year Research-status Report
古代ローマ帝国元首政期における皇帝権力と諸都市との関係についての研究
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24720339
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 亜希 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (80589044)
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Keywords | 古代ローマ / イタリア / 都市 / 碑文 |
Research Abstract |
本研究の目的は、皇帝と都市との関係性とそれを利用したローマ帝国の支配構造について考察することである。文献史料や各都市で発見された碑文史料などから分析する。 ローマの支配による影響を探るため、昨年度は、ローマの到来が先住の人々の心性にもたらした変化、さらにキリスト教の広がりによる変化について考察することを試みた。都市における皇帝の存在について調査する際、ローマ帝国における皇帝礼拝の広がりなどを考えると、宗教に目を向けることが不可欠だからだ。具体的には、北イタリアの重要な都市であったメディオラヌム(現ミラノ)の神域の変化について確認し、その意味について考察した。 今年度は、このテーマでの研究をさらに深めることを試みた。具体的には、地中海世界全体に影響を及ぼし得る神託があまり知られていない西方において、恐らく唯一超域的であったと言えるであろう中部イタリアのプラエネステ(現パレストリーナ)の神託所に注目した。共和政期に建設された女神フォルトゥーナ・プリミゲニアの神域の規模と名声が比類ないものであったことは文献史料で言及されている。この巨大な神域については、各場所の機能、建設年代などについて、様々な学問分野で議論されてきたので、まずは先行研究から問題点をまとめた。そしてパレストリーナを実際に訪問して古代のプラエネステの遺跡と博物館所蔵の様々な遺物を確認し、日本では入手できない文献を収集した。その上でプラエネステの町、神託所、そして女神についての言及がある史料を調査し、分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はイタリアとフランスにあたる地域の碑文について調査する予定であった。しかしそのために改めて碑文を見直してみると、皇帝が支配を及ぼした影響について、より深く調査することが必要だと分ったため、新たな視点での研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、ローマ帝国内では共同体によって宗教の形態が多様であったにもかかわらず、その目指すところは、帝国とその中にある各都市の安全を保証する皇帝のため、その様々な神々に礼拝することであったことが指摘されている。そこで今後は、引き続き宗教という視点から皇帝と都市との関わりとローマの支配について調査を行う予定である。
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