2012 Fiscal Year Research-status Report
憲法訴訟においてマイノリティの果たす役割に関する憲法学的考察
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24730020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大河内 美紀 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (20345838)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
1960年代の公民権運動の例が示すように、合衆国においてはマイノリティ・コミュニティまたはマイノリティ団体が憲法訴訟に大きな役割をはたしている。従来は合衆国におけるマイノリティの代表として、常に、アフリカ系アメリカ人が取り上げられてきたが、近年ではアジア系やラテン系住民の数が急増しており、マイノリティ・コミュニティも複雑化してきている。なかでもアジア系マイノリティは政治的発言力と経済的影響力の不均衡ゆえに、アフリカ系アメリカ人とは異なる位置づけがあるとも言われている。 そのため、24年度においては合衆国におけるコミュニティ論、とりわけマイノリティ・コミュニティの形成と実態にかかわる文献を収集し、検討してきた。計画では州レベルによるアファーマティブ・アクションに関する基本法・憲法の状況を検討することとしてきたが、上記研究課題との関係では、まずはその基盤となるコミュニティにかんする知見を広めることが先行されるべきと考えてのことである。 検討した。なかでもA・アギーレ・Jr&J・H・ターナー『アメリカのエスニシティ』(2007)が示すエスニック階層化という定式からは大きな示唆を受けた。この研究では、エスニック集団の形成における経済的・宗教的要因という伝統的指標に加えて、教育の要因をも重視している。教育のフィールドはアファーマティヴ・アクションの主要なターゲットのひとつでもあり、その点も関心を同じくするものである。 しかし、これらの研究はかならずしもアファーマティヴ・アクション法制と憲法という問題に直接の解を与えるものではないため、次年度はその点につきさらに研究を深める必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
州によってコミュニティの状況、アファーマティヴ・アクションの実施状況があまりに異なるため、どのエリアにヒアリングに行くべきか、候補を絞り込むことが困難であった。そのため、当初24年度に実施を予定していた現地調査を行うことができなかった。 しかし、南北各州に候補を絞り込むところまでは研究を進めることができたため、25年度に、当初24年度に実施予定だった分も併せて現地調査を行うことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
合衆国憲法学における平等論の変容の検討を行う。 初年度は主としてコミュニティ論の検討を行ったが、それをベースとして、25年度は、各州レベルでのアファーマティブ・アクション法制について検討する。また、現状調査のみならず、近時アファーマティヴ・アクションが変容を迫られている背後にいかなる「平等」原理の変容が存在するのかを分析・検討する。 そのための主たる素材としては批判的人種法学の流れを汲む論者の議論を中心に検討する。また、それらの議論に対する既存の憲法学(とりわけ、Ronald Dworkin、Lawrence Tribe らをはじめとするリベラル法学)からの応答を検討することによって、その意義と射程を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
コミュニティ論、アファーマティヴ・アクションおよび批判的人種法学に関する処分権を収集する。 また、憲法訴訟においてマイノリティ・コミュニティが実質的に果たした影響を分析するには地方新聞や現地NGO などの発行したリーフレットなども参照する必要があるため、2度の現地調査を企画し、関係資料の収集を行う予定である。
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