2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730146
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
バールィシェフ エドワルド 島根県立大学, 総合政策学部, 助手 (00581125)
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Keywords | 日露関係史 / 第一次世界大戦 / 国際関係史 / 軍事協力 / 対外政策 |
Research Abstract |
本年度において、今まで収集できた多種多様な史料や研究成果に基づいて、第一次世界大戦期の日露軍事協力を対象にして総括的な分析を試みた。この研究成果の一部は8月9日~10日に大阪経済法科大学で開催された第5回スラブユーラシア研究東アジア大会(The Fifth East Asian Conference on Slavic Eurasian Studies)で紹介された後、「第一次世界大戦期における日露関係における武器供給問題(1914年8月~1917年3月)」(The Issue of Armaments Supply in Russo-Japanese Relations during the First World War (August 1914 - March 1917))という論考の形で、島根県立大学の紀要『北東アジア研究』第25号に投稿された(刊行中)。 その他、スタンフォード大学フーバー研究所などで手に入れた貴重な史料を整理・分析した結果、学会誌『ロシア史研究』(2013年11月、第93号、25-46頁)に「第一次世界大戦期の《日露兵器同盟≫とロシア軍人たちの《見えない戦い≫――ロシア陸軍省砲兵本部の在日武器軍需品調達体制を中心に――」という論考を掲載した。この論考はいわゆる「ポドチャーギン・コレクション」を初めて積極的に活用し、最近までほとんど知られていなかった日露協力関係の一側面を実証的に分析するものとして、十分に学術的な価値が認められると思われる。 以上のように、2013年度において、新資料を生かした形で第一次大戦期の日露軍事協力の新たな側面・問題について研究成果を発表すると同時に、同時代の両国間関係の総括的な分析を行い、同時代の国際情勢および日露両国の政治経済的な状況を明確化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度においても、本格的な史料調査の結果、スタンフォード大学フーバー研究所アーカイブズやロシア連邦公文書館(GARF)などにおいて、当初予想していなかった資料群を発見した。そのため、研究計画は一層具体的なものとなったほか、新たな研究領域や研究問題を浮き彫りにし、問題意識を深めることができた。ロシア陸軍省砲兵本部の在日調達事業を実証的に検討するとともに、陸軍省経理本部や海軍省などの他のロシア省庁の在日調達活動について調査し、日露経済関係に光を当てる史料を多量に手に入れた。さらに、同時代の露米・露英軍事協力に関する豊富な資料を入手したので、日露軍事協力をより広大な国際的文脈のなかで分析できる環境を整えた。そのおかげで、「日露兵器同盟」という研究対象を論じることによって、帝国主義時代の国際秩序の諸問題に焦点を当てることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今までの研究成果を基盤にして、「日露兵器同盟」の具体的な様子を実証的に研究するとともに、政治・軍事的な側面だけでなく、貿易構造や財政関係といった両国間の構造的な諸問題、そして同時代の国際秩序の特徴などについてより精力的に検討しながら、本研究プロジェクトの最終目標となっている学術モノグラフの出版に向けた仕事に着手する。研究重点を徐々に集中的な資料収集から資料活用に移し、日露軍事協力を対象とする論考をまとめることに努め、新たな研究成果として発表する。資料的な「穴」を埋めるため、必要に応じて、モスクワ、サンクトペテルブルグおよびロンドンの諸公文書館を訪問する。さらに、東京の諸史料館や図書館の所蔵コレクションを精密に検討し、事実関係を再確認し、両国を囲む国内・国際情勢の理解を深めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には職務上かつ研究上の事情があって、当初計画していた長期の海外出張を実施することができなかったので、旅費および複写費として計上した金額の一部は残された。さらに、物品購入などに当てようとした研究費も特に使う必要がなかったので、次年度に回すことにした。 本プロジェクト研究の最終目標は学術モノグラフの刊行であるため、必要が生じた場合、来年度や再来年度に研究費の一部を出版費として使えるように、平成25年度分の研究費を可能な限りで節約した。さらに、職務上の環境が変わったため、研究体制を再整理する必要が生じ、今年度以降の物品費を多めに計上した。
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