2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24730167
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安井 大真 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (30584560)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 経済成長 / 寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究期間全体を通じて、(1)寿命の延長は、家計のライフ・サイクル行動にどのような変化をもたらすのか、(2)そのような変化は、経済成長とどのように関連するのか、ということについて一つの回答を与えることができるような理論モデルの構築に取り組んできた。最終年度においては、寿命の延長が一人当たり所得にどのような影響を与えるかを分析可能な経済成長モデルを構築し、そこから導かれた仮説をデータを用いて検証した。 寿命と経済成長の間には強い相関が観察されるが、近年の因果関係の存在を特定しようとする実証研究は、“寿命の延長→経済成長”という因果関係が成り立っていない可能性を指摘している。Acemoglu and Johnson (2007)は、寿命の延長が一人当たり所得に正の影響を与えるどころか、負の影響を与えている可能性を実証的に示し、そのメカニズムとして、寿命延長による人口増加がもたらす一人当たり資本の希薄化効果を提示している。しかし、その後、反対の結果を導き出した実証研究が登場するなど、この問題は未解決の問題である。 本研究の成果は、経済における人的資本の役割を考慮に入れることがこの未解決の問題を解決しうることを示したことである。出発点となったアイデアは、人的資本は物的資本に比べて人口増加による希薄効果の影響を受けにくいので、物的資本が成長のエンジンとなっている経済と人的資本が成長のエンジンとなっている経済では、寿命の延長が一人当たり所得に与える影響も異なるはずである、というものである。そのようなアイデアを組み込んだ経済成長モデルを構築したところ、寿命の延長が経済成長に与える影響は、人的資本水準が高い国においては正、低い国においては負であるという理論的な結論が得られ、データを使った実証分析においてその理論的結論が支持された。
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Research Products
(1 results)