2014 Fiscal Year Research-status Report
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24730207
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 和博 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10362633)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 空間経済学 / 技術革新 / 経済成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際貿易、企業の参入が経済厚生に与える影響について新たな知見を得ることが出来た。貿易の利益についてはこれまでも様々な研究がなされてきた。経済活動の特化や新たな種類の財の消費が可能になることによる貿易の利益などがそれにあたる。どのような側面に光を当てて分析を行なっても国際貿易の利益は正になることが多く、負になることは殆どない。つまり政策的には貿易自由化を求める論文が多いといってよい。本研究は貿易の自由化が経済厚生に負の影響を与える場合があることを示した。国際貿易によって企業間の競争が激しくなると、市場から退出する企業がある。国内市場で退出する企業が多いと、国内市場での消費財の種類が減少する。これが経済厚生に負の影響を与えるのである。まとめると、貿易自由化によって過剰に競争が激しくなると国内市場で多くの企業が市場から退出し、消費財の多様性が失われるのである。 また、国内市場において企業が過小参入になっていることも示している。通常の研究は過剰参入の結果になることが多い。それら既存研究とは対照的な結果である。企業の参入が増えることによって消費財の多様性が増加し、人々が労働供給量を増やす。それによって国内市場が拡大し、企業の参入が進む。企業の参入が進むと消費財の多様性が増加し、このことによって経済厚生が増加することがその背景にはある。つまり、企業の参入を刺激するような政策が求められる事を示唆している。 また、企業の参入の増加が労働供給を増加し、それが市場の拡大を生むことで企業数と消費財の多様性を生み出す企業の集積を促進することも示した。 本研究は貿易自由化が経済厚生を必ずしも増加させないこと、企業の参入を促進する政策が重要であること、そして企業参入によって集積が生み出され、経済厚生を増加させることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
労働供給を内生化した論文を2本執筆中である。理論モデルの構築は終わり、現在は分析の精緻化と論文の執筆を行なっている。論文のうち一本はすでにディスカッションペーパーとして発表されており、研究会においても数回報告されている。研究会においては多くのコメントを貰い、すでにそれらを反映させて論文を改訂している。このことは研究が順調に進んでいることを示している。また、研究を始めた段階においては、内生的労働供給の論文執筆の予定は1本のみであったが理論モデルが新たに拡張できることがわかり、2本執筆することが出来た。2本とも分析が順調に進み、本年度中に国際学会での報告を計画している。その意味では当初の計画以上に進んでいるといってよいと思われる。 多国籍企業の分析を行なった論文も完成させる事が出来た。既に論文は投稿されており、多国籍企業の研究が当初の計画通りに進んでいることを意味している。これも新たな研究の拡張が行われており、本年度6月に研究会で報告されることが決まっている。ディスカッションペーパーとして公表されることも決まっており、研究計画以上に進んでいることは明白である。 また、本年度一本の論文が国際学術誌に掲載許可された。本研究を始めた時に執筆した論文であり、本研究が具体的な成果を得ることに成功した事を意味している。これは当初計画以上に研究が進んでいる事を意味している。 以上のように、空間経済学の新たな理論モデルの構築に様々な角度から成功し、新たな成果を得られつつある本研究は当初の計画以上に進展していると言って良い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまで行なってきた研究の継続が求められる。労働供給を内生化し、需要の価格弾力性が変化する場合の国際貿易に関する論文は本年中に国際学会で報告される予定である。既に理論モデルの分析は大枠では終わっているが、精緻化し、細かい条件を求める作業はまだ残っている。これらの課題をクリアし、論文の執筆を完成させて上で、国際学会で報告させる。さらにそこで得られるコメントを反映させて論文を改訂し、国際学術誌に投稿する予定である。 労働供給が内生化された場合の企業の集積に関する論文も本年中に国際学会で報告される予定である。やはり、分析の精緻化と論文の完成作業が残っているので、早急にこれらの作業を終わらせ、報告にのぞむ予定である。本論文もコメントを反映した後に改訂を行い、国際学術誌へと投稿することを計画している。 多国籍企業に関する研究は分析、論文の執筆共に最終段階に入っている。そのうちの一本はすでに国際学術誌に投稿され、もう一本は6月に研究会で報告されたのち、ディスカッションペーパーになることが決まっている。今後はそこで得られるコメントを反映して論文を改訂し、国際学会での報告を行なったのちに国際学術誌に投稿することを計画している。 本研究では以上の様に様々な角度から新しい空間経済学の理論モデルを発展させている。経済成長、技術革新を空間経済学の観点から分析した新しい理論モデルの構築は今後も引き続き本研究でなされるべき研究課題である。
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Causes of Carryover |
国外で行われる国際学会での報告を計画していた。それにより、旅費の支出を計画していた。しかし、修士論文を完成させる必要がある学生の論文指導の時間を確保する必要があったこと、論文の進展の状況から本年度よりも次年度に報告をしたほうが質の高い報告が見込まれること、同時期に国内の別の研究会で報告する機会があったことにより、国外出張と国際学会での報告をの予定を変更することにした。これにより、旅費の支出が大幅に減少して次年度に繰り越す事となった。 また、次年度に国外出張を計画しており、本年度予算を繰り越す事で次年度の出張旅費を確実に確保できることから、当該年度の旅費を次年度に回すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は旅費で支出する予定である。11月にアメリカで行われる国際学会での報告を計画している。学会報告に必要な出張旅費は本年度予算のみでは賄えない可能性が高いため、次年度使用額によって必要な出張旅費を確保できる予定である。
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Research Products
(1 results)