2012 Fiscal Year Research-status Report
ミクロ的生産性とマクロ的パフォーマンスの間の非線形関係についての研究
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24730235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅沼 大樹 東北大学, 経済学研究科(研究院), 博士研究員 (10579965)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国債情報交換 |
Research Abstract |
平成24年度における本研究の研究実績は以下のとおりである。 まず、本研究開始に先立ち既に構築済みであったモデルを若干修正し、生産性格差について分布を付けられるようにモデルの自由度を強化した。これによって、より妥当性のあるシミュレーションを行うことが可能になったし、将来的に実証研究へと拡張する場合においても、モデルの汎用性が高まったと言える。 また、8月に一橋大学にて開催されたThe Second Summer School on Analytical Political Economy: Equality and Walfare、11月にアメリカのUniversity of Massachusettsにて開催されたNew Schoolとの合同Workshop、同じく11月に明治大学にて開催されたケインズ学会、3月に中央大学にて開催された進化経済学会などで論文の報告を行った。これらの報告機会の中では多数の先生方から大変有益なコメントやご批判をいただいた。シミュレーション主体の研究は実証研究との間になんらかの客観的な関連性を持たねばならないこと、というのはまことに的確なご指摘であった。また、本研究のシミュレーション結果について、単に生産性の違いだけではなく、資本ストックの大きさに関わる挙動について明確にするべきであるというご指摘もいただいた。この点に関しては、代表者自身が気づいていなかったモデルの振る舞いでもあったので、ご教示賜ったことは大変ありがたいことであった。 こうした機会を通じ、研究成果はフルペーパーとして完成しつつあるが、平成24年度末からの代表者の所属研究機関変更などに伴い、残念ながらまだ専門誌への投稿というところまでは漕ぎつけていない。これについては平成25年度の出来るだけ早い時期に実行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の研究計画のうち、銀行間のネットワークを導入する方向への拡張がまだ完成していない。現在取り組んでいるところであり、平成25年度中には完了させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成24年度の積み残しである銀行間ネットワークを導入するとともに、モデルのもう一方の主体である企業側についても拡張を試みる。拡張の方向は、企業間の生産ネットワークの導入というものである。これは、サプライ・チェーンを再現するためのモデル拡張である。この拡張にはDelli Gatti, D., M. Gallegati, B.C. Greenwald, A. Russo, and J.E. Stiglitz, “Business Fluctuations and Bankruptcy Avalanches in an Evolving Network Economy”, Journal of Economic Interaction and Coordination, Vol. 4, pp. 195-212, 2009が参考になる。この論文は企業間信用をモデル化したものであるが、中間財・最終消費財のようなサプライチェーンのモデル構築にも有用である。ネットワークは経済活動の中で徐々に発達してくるものであろうから、本来的には内生的なネットワーク形成をモデル化すべきであろうが、一足とびにそこへ到達するにはモデルが複雑になりすぎる可能性があるので、平成25年度は外生的なネットワークを仮定し分析することにする。代表者は前掲Delli Gatti et al. (2009)を執筆したワーキング・グループのリーダーであり本研究で使用するエージェント・ベース。モデルと呼ばれるモデルの世界的権威でもあるM.Gallegati教授に師事し、ワーキング・グループにも参加した経験があり、他の執筆者(Stiglitz教授を除く)とも交流がある。彼らからの助言を得たり、その他研究協力者や学会等で築いた人脈などを使って研究がうまく進まない場合のフォローも考えているし、それらは実行可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究ではシミュレーションが重要な役割を果たすので、効率的にシミュレーションを行うためにMATLABの最新版であるR2013aを購入予定(約30万円)。また、海外を含めた学会や研究会に複数回出席する予定である(海外約25万円、国内約10万円)。ネットワーク分析関連の書籍の購入も予定している(約10万円)。その他雑費の計上も予定している(約5万円)。
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