2012 Fiscal Year Research-status Report
経済連携・統合によるスピルオーバー効果の実証分析ー欧州と東アジアの比較ー
Project/Area Number |
24730242
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土井 康裕 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70508522)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヨーロッパ / ドイツ / アセアン / 韓国 |
Research Abstract |
研究課題「経済連携・統合によるスピルオーバー効果の実証分析―欧州と東アジアの比較―」の初年度として、平成24年度には大きく分けて以下の二点に関して研究を進めた。 一つは、ヨーロッパの経済統合に関するスピルオーバー効果を分析する基盤として、本研究の連携研究者であるドイツ・フライブルグ大学経済学部のOliver Landmann教授とヨーロッパ経済の現状分析を行った。具体的には、EUROZoneに属する国々で起こっている不均衡について、フィリップス曲線の概念を用い、域内でどのような連動性が見られるのか実証的に分析を行った。結果として、ドイツを筆頭にした先進国とギリシャやポルトガルなどの後進国との間では、フィリップス曲線の傾きに格差があることがわかった。これは、金融政策を統合したことによる経済の連動性の裏に、財政政策の差異や各国の産業構造や経済レベルの差がぞんざいしており、域内のアンバランスを生み出しているということがわかった。本研究内容は、平成24年9月17日に名古屋大学で開催されたThe 25th Freiburg-Nagoya Joint Seminarにおいて報告した。 二つ目は、アジアの経済連携に関するスピルオーバー効果を分析する基盤として、研究連携者である韓国・忠南大学経済学部のJeong Seeun准教授と、東アジアの国々における産業構造比較と生産性の収斂について研究・分析を行った。本研究は、以下のように査読論文として公刊に至った。 JEONG and DOI (2012),“Have structure and productivity in East Asian manufacturing converged?” The Journal of Northeast Asian Economic Studies, Vol. 24, No. 2, pp. 355-385.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24 年度は、これまで進めてきた研究を背景に、データの購入・整理と実証分析モデルの構築と分析実施を行うことを計画していた。 実際には、データの購入は行わなかったが、本研究を進めるための基礎的なデータは収集することができた。また、基礎的なレベルでヨーロッパと東アジアの分析を行うことができたので、本研究における今後の基盤はできたと考えている。 特に、スピルオーバーの分析を行うための、ヨーロッパと東アジアの経済統合・連携につしては概ねその効果や問題点を洗い出すことができたと考えている。 また、実証分析モデルとして構想しているモデルも大枠ができており、どのようにして応用するかが今後の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25 年度は、既存の部分的な実証分析を、複合的かつ包括的な実証分析へ拡大する。特に、資本と労働という生産要素移動とスピルオーバー効果の包括的なモデルの構築を行う。平成26、27 年度には、これまでの分析を基に、ヨーロッパと東アジアの比較分析を行い、経済統合や生産要素市場の国際移動自由化によるスピルオーバー効果とそれにともなう経済全体のメカニズム変化について、結論を導き出す。 特に平成25 年度については、平成24 年度の研究を継続して既存の部分的な実証分析を行い、さらに複合的かつ包括的な実証分析を行うべく研究の精度と内容の充実を目指す。特にMussa[1974]等を参照し、経済統合による資本移動や生産性向上を踏まえ、労働分配メカニズムを中心とした理論的背景を明確化する。また、経済全体を対象とした市場のメカニズムを明示するため、Ram and Zhang[2002]やMakki and Somwaru[2004]等の生産要素移動に関する実証分析を参考とし、理論に基づいた実証的な分析モデルの構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)