2013 Fiscal Year Research-status Report
経済連携・統合によるスピルオーバー効果の実証分析ー欧州と東アジアの比較ー
Project/Area Number |
24730242
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土井 康裕 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70508522)
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Keywords | 通貨統合 / 財政政策 / IS-LMモデル |
Research Abstract |
ヨーロッパにおける経済統合、とくに通貨統合地域におけるマクロ経済政策上のスピルオーバー効果について研究を進めている。 経済学分野のこれまでの先行研究では、財政政策の重要な一側面であ財政移転について多くの分析が行われてきたが、基本的なマクロ経済政策としての財政政策、すなわち景気刺激策としての財政支出の拡大に関するノーマティブ(nomative)な議論は十分に行われてこなかった。 本研究で扱うIS-LM モデルは、Branchard [2006]6 やMankiw [2010]7 等で扱われているものを基本としている。ただし、経済統合地域への応用を踏まえて、国際資本移動、さらには為替制度(変動相場・固定相場)の違いを組み入れたマンデル=フレミング・モデルを修正したCaves et al. [2005]に基づいてモデルを定式化する。はじめに、ベースラインとなる基本的なIS-LM モデルについて説明し、IS-LM モデルの政策的インプリケーションについて解説する。続いて経済統合を念頭に置き、固定相場制のもとにおけるマンデル=フレミング・モデル(2 国モデル)を説明する。基本的なマンデル=フレミング・モデルでは、各国の中央銀行(貨幣当局)は自律的な金融政策を行えると想定している。そこでマンデル=フレミング・モデルの枠組みを応用することにより、2 ヶ国間で通貨統合・金融政策統合が行われた場合、一国の財政政策が通貨同盟の多国に対してどのような効果を及ぼすのか分析を進めている。特に、他国が直面するであろう政策上の問題について考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状では、当初計画していた研究内容をほぼ予定通り遂行していると考えている。その理由は、以下の二つの研究を進めていることに依拠する。 1)ヨーロッパの経済統合を筆頭に、国家間における財や生産要素移動の自由化が加速しているなかで、政策的なスピルオーバー効果は重要な意味を持っている。経済政策上のスピルオーバー効果を明示することは、理論上の問題を明示することになると考えている。本研究は、概ね最終段階に達しており、平成25年度に目標としていた包括的な分析の枠組みが見えてきたと考えている。 2)本研究課題では資本と労働の越境移動を中心に、経済統合による直接的な効果だけではなく、間接的な効果(スピルオーバー効果)が経済成長にどのような効果を与えているのかを実証的に分析することを目的としている。現在は、経済統合に参加する国々における産業構造の連動性が、資本移動によって起こっているではないかという視点に立ち、分析を進めている。本研究を平成26年にはヨーロッパの国々で分析し、平成27年度には東アジアを分析することでその比較を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度前半は、これまでの分析を基に、ヨーロッパの実証分析を行う予定である。特に、経済統合や生産要素市場の国際移動自由化によるスピルオーバー効果とそれにともなう経済全体のメカニズム変化について、結論を導き出す。ここでは、先に進めている財政政策によるスピルオーバー効果も踏まえ、経済政策の課題についても研究を進める予定である。ヨーロッパの実証研究に関しては、EU の統計機関であるEurostat のデータを中心に分析を進める。 平成26後半から、27 年度には、これまでの分析を基に、ヨーロッパと東アジアの比較分析を行う。東アジアの研究に関しては、ASEAN やUNIDO のデータを使い分析を進める。また、EU 並びに東アジアのASEAN+3 やTPP 等の政策展開と生産要素移動の自由化について政策面の研究も進める。
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