2013 Fiscal Year Research-status Report
婚資が女性の家庭内交渉力・子女への人的投資に与える影響の実証分析
Project/Area Number |
24730261
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
牧野 百恵 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (50450531)
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Keywords | ダウリー / パキスタン / 家計調査 / 実証分析 / 交換婚 / 女性の意思決定権 |
Research Abstract |
H25年度はパキスタン・パンジャーブ州全域にまたがり、ダウリーおよび結婚の慣習に関する農村家計調査を行った。家計調査はパキスタンのFaizan Data Collection and Research Centre(FDCRC)との協力によるものである。日本の本州と同じくらいの広さであるパンジャーブ州全域を代表するような調査にするための工夫を施した。まず、州を気候・作物の違い等から5地域に分け、各地域から1県を無作為抽出した。全5県から、センサスに基づいて6村を無作為抽出し、各村では層化無作為抽出法に基づき20家計を選出した。よって5×6×20 = 600家計規模の調査である。調査票は2つのパートからなり、前半は世帯主、後半はその配偶者(妻)への質問という形式にした。後者への質問は、回答の独立性を保つ工夫も行った。広域をカバーしただけあって、州内でも結婚にまつわる慣習(ダウリー、婚資、いとこ婚、同村婚、交換婚など)には様々な違いがみられた。 詳しい実証分析は平成26年度の作業であるが、データクリーニング作業をするなかで大まかに分かったことがある。例えば、交換婚(Watta Satta)についてである。交換婚とは一対の家族間で女性(男性)を交換する結婚のことを指し、パキスタンではとりわけ貧しい層によくみられる慣習制度であるといわれる。家計調査を実際に行ったなかでは、交換婚の事例はみられたものの、どちらかといえば少数派であった。交換婚では、定義として一対の家族から二組の婚姻が成立することもあり、当事者に選択の自由はなく結婚は半ば強制的であり、その点で人権団体、NGOなどによる批判の対象となってきた。しかし、調査からは、交換婚であろうとなかろうと女性が自身の結婚に関する選択に何らかの意見をいうことはほぼ皆無であったことが分かり、交換婚そのものが悪いわけではないように思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はパキスタン・パンジャーブ州全域にまたがる農村家計調査を実施することが最大の目的であった。調査は無事終了し、現在データクリーニング中である。データクリーニングをする際に、データの不備などが見つかっているが、そのたびに研究協力先であるFDCRCに連絡をとり、調査先に電話でフォローアップ調査を行ってもらっており、そちらも順調に進んでいる。携帯電話も有していない貧困家計ですら、近隣などに電話することで、調査対象家計を正確にトラッキングできている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、H25年度に実施したパキスタン・パンジャーブ州での農村家計調査をもとに、実証分析を行う。分析する仮説は、ダウリーが女性の家計内におけるバーゲニング力(地位や意思決定権など)を上昇させる、子女の教育にプラスの影響を与える、という点である。仮説は、ダウリーがまるで諸悪の根源であるかのような昨今の報道などに反証する意図をもって立てられた。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
円ドル為替相場、パキスタンの二桁インフレを考慮して、研究協力者FDCRCへの委託農村家計調査にかかる金額を円建てでは多めに見積もって申請したため。 平成26年度は最終成果を英文で執筆し学術雑誌への投稿準備を行うため、英文監修費を計上している。また、広く意見交換を行うための学会発表にかかる経費に充当する予定である。
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