2014 Fiscal Year Research-status Report
婚資が女性の家庭内交渉力・子女への人的投資に与える影響の実証分析
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24730261
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
牧野 百恵 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (50450531)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ダウリー / パキスタン / 家計調査 / 実証分析 / 女性のエンパワメント |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は、前年度にパキスタン・パンジャーブ州全域において実施したダウリーおよび結婚の慣習に関する農村家計調査を一次データとして実証分析を行い、論文を執筆した。 推定にあたっては、ダウリーの内生性に配慮した。具体的には、観察不能な変数がダウリー額と婚家における女性の厚生水準の両者に影響を与えることが懸念される。この点、観察不能な変数の影響の度合いは、女性の厚生水準に影響を与えるであろう説明変数を出来る限り加えることで、ある程度推し量ることができる(Altonji et al. 2005)。結果、観察不能な変数の影響は、ダウリーが女性の厚生水準に与える影響を消すほど大きい可能性は小さいことが示唆された。また、内生性への対処として、操作変数法による推定も試みた。ダウリーの操作変数として女性の兄弟のダウリー額、ブライドプライスの操作変数として女性の姉妹のブライドプライス額を使用した。 推定結果によると、ダウリー額が高いほど婚家における女性の意思決定権が上昇し、行動の自由も増し、人的投資に関する男児選好が軽減され、家事労働の負担も軽減することが分かった。相続権や財産権が女性に保障されていないなかでは、ダウリーは女性の権利を補完的に保障する社会慣習であるようだ。推定結果からは、現状でダウリーを実効的に禁止すると女性の厚生水準がかえって下がること、一律に禁止した場合の影響を考慮したうえで政策形成をすることの重要性が示唆された。 本研究の成果は牧野百恵(2014)、Makino(2014)、Makino(2015)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、実証分析を行い、論文を執筆し学術雑誌への投稿準備に充てる計画であった。計画どおり、研究の成果は論文(牧野, 2014; Makino, 2014; Makino, 2015)として発表することができた。 海外学術雑誌へ投稿したが、提出後のR&R(Review and Resubmit)に関する先方からの査読回答が遅れたために改稿が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
R&Rに関する先方からの査読回答をまって、論文を改稿し英文校正を行ったうえで海外学術雑誌に再投稿する。また掲載が決定するまでは学会等での成果の発表を積極的に行う。6月にヨーロッパ人口経済学会(European Society for Population Economics)、9月に日本南アジア学会において発表予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた、海外の英文学術雑誌への論文提出後のR&R(Review and Resubmit)に関する先方からの査読回答が遅れたために、R&Rにおける英文校正費につき未使用額が発生した。また、R&Rの際は学会にて研究成果を発表する予定であったが、R&Rが次年度となったため、学会参加費についても未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度未使用額は、R&Rの際の英文校正費として使用したい。また、R&R後も掲載が決定するまでは学会等での発表を積極的に行っていくため、学会参加費にも充てたい。
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