2012 Fiscal Year Research-status Report
若手研究者・技術者の知識創造性を高めるモチベーション・マネジメントの質的研究
Project/Area Number |
24730331
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Hokkaido Information University |
Principal Investigator |
金間 大介 北海道情報大学, 経営情報学部, 准教授 (80435742)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 若手研究者 / モチベーション |
Research Abstract |
若手研究者は国や組織の競争力を高める重要な資源であるため,今後の科学技術政策やイノベーション戦略を立案する上で,彼らの意欲を高めるような方策を検討することには大きな意味がある。そこで本研究では,直接若手研究者に対しインタビューを行い,研究を行う動機や,やる気を低下させる要因,その対処法などについて調査した。 その結果,若手研究者には,彼らの持つモチベーション特性の違いから,課題解決型と課題発見型の2つのタイプが存在することが分かった。課題解決型の若手研究者は,自己の能力や技能を用いて課題解決に挑むことに研究の面白さを感じる一方で,対応不可能と思われる課題や曖昧な課題を与えられた時に意欲の低下が見られた。このような時彼らは,曖昧な作業の中から挑戦すべきテーマを見つけ出すなどして自らのモチベーションを保つよう対処していた。課題発見型の若手研究者は,自身が関与する研究分野を既知の領域と未知の領域に別けて考え,自らが先頭に立って未知の領域を開拓することを研究意欲の源泉としていた。また彼らは,外部からの強いコントロールを感じた時に意欲の低下を示した。このような時彼らは,何らかの外的な報酬に行動の原因を帰属させることでモチベーションを取り戻そうとしていた。 以上を整理すると,基本的に若手研究者の多くは高い内発的モチベーションを持っており,それは課題解決のプロセスを楽しむことや,未知の世界に対する探求心などに基づいていることが明らかとなった。また,彼らの間には課題解決型と課題発見型の2つのタイプが存在し,モチベーションの向上・低下要因ならびにその対処方法について対照的な差異が見られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,若手研究者の研究に対するモチベーションの向上および低下要因を明らかにすることを目的として,彼らに対しインタビュー調査を行った。その結果,基本的に若手研究者の多くは,高い内発的モチベーションを持っており,それは,課題解決のプロセスを楽しむことや,未知の世界に対する探求心などに基づいていることが明らかとなった。また,彼らの間には課題解決型と課題発見型の2つのタイプが存在し,モチベーションの向上・低下要因ならびにその対処方法について対照的な差異が見られた。このような差異による分類は、当初は想定できなかったもので、計画以上の新たな進展と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では若手研究者のモチベーションを2つのタイプに分けて分析したが、同じタイプでも細部では考えが異なるケースも見受けられることから,今後詳細に分析する必要がある。例えば「社会貢献・地域貢献」や「交友・友情・仲間との結びつき」を動機づけの上位に挙げている若手研究者も存在することから,彼らのモチベーションにとってこれら2つの項目に強い相関がある可能性がある。したがって、彼らのような「コーディネータ型」の存在も検討されるべきであろう。彼らは課題解決型や課題発見型とはまた違ったモチベーションを持っているはずである。彼らは,課題解決のプロセスや未知の研究領域の探索よりも,自身の活動の結果が地域社会の役に立つことに最大の喜びを感じ,逆に孤立した作業やルーチンワークばかりが続くと意欲の低下を示す可能性がある。このような時は頻繁に報告を行ったり,他の理解者を見つけるなどして意欲の回復を図る。彼らのモチベーションを高める鍵は,課題解決型の「有能感」,課題発見型の「自律性」に対し,「関係性」となることがデシらの先行研究から示唆される。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,日本人の若手研究者に焦点を当てて分析を行ったが,いくつかの先行研究によると,世代間や,国・文化の違いによって,モチベーションが高まる要因は異なることが報告されている。特に,国・文化の違いという意味では,日本人は独特のモチベーションを持っていることも考えられるため,何らかの国際比較研究を行う必要がある。なお、前年度はほぼ予定通り研究費を使用したが、わずかな繰り越しが発生した。この分は翌年度分と合わせて、上記の課題に対し効率的に使用する。
|