2014 Fiscal Year Research-status Report
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24730388
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
堀口 真司 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (10432569)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 会計制度 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
「会計制度の社会学的分析に関する基礎的研究」という課題のもと、本研究では、1980年代以降、主としてヨーロッパを中心に取り組まれてきた、会計制度を社会学的な観点から分析してきた研究の動向とその意義を体系的に整理し、今後、当該研究方法を日本の文脈に応用しその成果を海外へ発信していく際の基礎となる知識を提供することを目的に、参考となる書籍の作成を進めている。 本研究を計画した当初においては、「1.会計制度の社会学的分析の意義」「2.会計制度におけるマネジリアリズムとその相克」「3.会計制度におけるユーティリタリアニズムとその相克」「4.会計制度におけるヒューマニズムとその相克」という4つの観点から整理することを予定していたが、平成26年度の「実績状況報告書 今後の研究の推進方策等」でも提示したように、当該領域の研究動向が必ずしも上記の観点から進められているわけではないことから、それらの動向をより適切に反映するために、方法論に関する分類をフランス社会学、ドイツ社会学等に分け、第1部として再構成することとした。また合わせて新たに当該方法論の具体的適用例に関する部を設け、「1.会計制度の社会学的分析の方法論」「2.会計制度の社会学的分析の応用」から成る2部構成として進めている。 具体的には、第1部では、フランス系社会学の基礎としてフーコーやラトゥールの議論を扱い、ドイツ系社会学の基礎としてハーバーマスやルーマンの議論を扱う。また第2部では、第1部で示された社会学的な分析視角の応用対象として、これまで会計制度の基礎概念として利用されてきた「会計責任(アカウンタビリティ)」概念を取り上げ、その意義と限界を社会学的な観点から整理する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、1980年代以降ヨーロッパを中心に取り組まれてきた会計制度の社会学的な分析の動向を整理し、今後当該領域で研究をする者にとって必要となる基礎知識を体系化することである。 こうした目的のもと、平成24年度においては、会計制度の社会学的分析の意義を抽出することに焦点を当て、既出論文である「相対主義的会計研究の現代的地平」を基礎としながら、関連資料の収集および整理を行った。また平成25年度においては、会計制度の社会学的分析においてもっとも重要なテーマの一つである、フランス哲学者ミシェル・フーコーの議論が会計研究の文脈においてどのように受け入れられてきたのかについて詳細なレビューを行った。 平成26年度には、これまで当該分野の発展に実質的な影響を与えてきたフランス思想およびドイツ思想をより的確に反映するために、これまでの4部構成を見直し、新たに「1.会計制度の社会学的分析の方法論」「2.会計制度の社会学的分析の応用」から成る2部構成として既出論文を配列したうえで、その方法論の具体的な応用対象として、会計制度の基礎概念として論じられてきたアカウンタビリティを取り上げることとした。 これらの2部に編入する内容は、これまで研究代表者が断片的に取り組んできたものであることから、最終年度にはこれらを再整理し、不足部分を補う形で仕上げる予定であることから、「おおむね順調に進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
「1.会計制度の社会学的分析の方法論」について。 「研究実績の概要」でも述べたとおり、第1部では、これまで会計制度の社会学的分析に実質的な影響を与えてきたフランス系社会学とドイツ系社会学を分類して整理する。具体的には、フランス系社会学ではフーコーやラトゥールの議論を扱い、ドイツ系社会学ではハーバーマスやルーマンの議論を扱う。それぞれ、既出論文において断片的に論じてきた内容であるが、より最新の展開を追跡するために、本年度においては、改めてラトゥールの議論を整理し、当該社会学的分析の可能性を予測するものとして位置づける。
「2.会計制度の社会学的分析の応用」について。 フランスやドイツにおける社会学の根本的な成果は、個人の意思決定やシステム間の共訳可能性の限界を提示したことであった。例えば、フーコーによってヒューマニズムの偶然性が示され、またルーマンによってシステム間の相互無視の可能性が示された。こうしたことは、本来的に意思決定や対話の存在を前提とする会計学にとって根本的な限界を提示したことになる。なぜなら、記録、測定、計算、報告といういずれをとってみても、会計(説明する)とは、何らかの意思決定や対話を前提とする制度であるからである。本部応用編ではこれまで会計実践の基礎理論として位置づけられてきたアカウンタビリティに焦点を当て、これまで断片的に取り組んできた関連既出論文を再整理することとする。
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Causes of Carryover |
平成26年度においては、所属研究機関内部の研究基金(澤村正鹿学術奨励基金)へ応募し、30万円の助成を受けることができた(研究課題名「公認会計士の倫理観に関する日英比較調査」)。同研究は、日本とイギリスの公認会計士に対してアンケート調査を実施するものであるが、PC関連消耗品費等は重複して利用することが可能なものであることから、当該年度の科研費については相当額分を節約することができた。また、本研究(本科研費申請分)との関連で参加を予定していた2015年度ヨーロッパ会計研究学会(2015年4月開催)はグラスゴーで開催されるが、同研究(澤村基金分)における共同研究者の所属もまたグラスゴー大学であることから、研究打ち合わせのための訪問を重ねることも可能となった。そこで平成26年度の科研費利用を30万円節約し、次年度へ繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・2015年ヨーロッパ会計研究学会では、特別プログラムとして現在ヨーロッパを基盤とする主要ジャーナルの編集長を務める者が一堂に会する場が設けられている。そこで本研究との関連から、当該分野の発展可能性を再確認するために、当該プログラムへ参加するための費用として充当する(旅費として20万円)。 ・平成27年度は本研究の最終年度に当たるため、繰り越し金額の一部を出版関係経費に充当する(その他費用として10万円)。
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