2012 Fiscal Year Research-status Report
会計上の保守主義の動機と経済的帰結に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
24730408
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Aizu Junior College Division |
Principal Investigator |
大橋 良生 会津大学短期大学部, その他部局等, 講師 (50442017)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 会計上の保守主義 / 資本コスト |
Research Abstract |
本研究の目的は,会計実務方針の一つである保守主義に着目し,会計上の保守主義の動機及び経済的帰結を理論的・実証的に明らかにすることである。この目的に対し,本年度は,会計制度や理論的研究における保守的会計の位置づけ,及び保守主義の定量化に関する実証的研究の成果のサーベイを中心に行った。 近年進められている会計制度の整備では,国内外の概念フレームワークにおいて,保守主義は財務諸表にバイアスをもたらすとされ,否定的な立場がとられている。しかしながら,保守的な会計処理は純資産が帳簿金額以上に充実し将来リスクへの備えとして機能することが期待され,従来より会計実務に浸透してきているとされている。 保守性の程度を定量化する実証的研究では,保守主義には条件付き保守主義と無条件保守主義の相反する側面があることが指摘されており,Basu(1997)をはじめとして,保守主義会計のそれぞれの側面をとらえた測定尺度が開発されてきている。それらの尺度を用いた先行研究では,平均的にみて日本企業が保守的な会計処理を行っていることが報告されている。 先行研究が日本企業全体を分析対象としているのに対し,本研究では企業特性(動機)に着目し,その一つとして,社債発行企業を取り上げる。企業価値の観点から,資本コスト,特に負債コストに焦点を合わせ,保守的な会計処理をとる企業に対して,社債権者がどのような反応をしているのかを分析するためのデータ整理を進めている。同じ債権者であっても,金融機関と社債権者では異なる側面が多いため,異なる反応が期待されるためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①国内外の会計制度や理論的研究における保守主義の定義・位置づけの動向の整理,および保守主義の定量化・尺度に関する指標の理論的特徴を整理するとともに,②日本企業の会計情報の保守性を測定することの2点について,研究ノートにまとめることを平成24年度の主な計画としていた。しかし,保守主義の定量化に関する指標,およびそれらの指標に用いるためのデータが多岐・多量にわたり,測定結果を整理するところまで進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究のサーベイの結果,日本企業全体を対象とした実証的研究が多く,社債発行などの企業特性に焦点をあてた研究があまり多くないことがわかった。今後の推進方策として,分析対象とする企業(企業特性)を特定化し,市販の財務データや株価データを用いて統計的分析により,会計上の保守主義の動機及び経済的帰結に関する実証的証拠を蓄積する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は先行研究の成果のレビューを中心に行ったため,研究成果の公表を行う段階まで進めなかったことが研究費の繰り越しの原因の一つである。会計上の保守主義に関する企業特性(動機)は,株主訴訟,税金,会計規制など多岐にわたり,その経済的帰結も同様である。そのため,適宜,学会・研究会などで報告を積み重ねることで,より多角的な視点から研究することを志向する。繰り越した研究費は,次年度の研究費と合わせ,研究報告のための旅費や,データの更新費用などに使用する予定である。
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