2013 Fiscal Year Research-status Report
会計上の保守主義の動機と経済的帰結に関する理論的・実証的研究
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24730408
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Research Institution | The University of Aizu Junior College Division |
Principal Investigator |
大橋 良生 会津大学短期大学部, その他部局等, 講師 (50442017)
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Keywords | 保守主義 / 負債コスト |
Research Abstract |
本研究の目的は,会計実務方針の一つである保守主義に着目し,会計上の保守主義の動機及び経済的帰結を理論的・実証的に明らかにすることである。この目的に対し,本年度は,保守主義の定量化に関する実証的研究の成果に基づいて,日本企業による会計保守主義の程度の測定を中心に行った。 保守性の程度を定量化する実証研究では,保守主義の二面性,すなわち条件付保守主義と無条件保守主義の側面があることが指摘されている。特に,Basu (1997)は,保守主義の定量化の先駆的な研究であり,条件付保守主義の測定を可能としており,さまざまな実証研究で用いられている。 ただし,Basu (1997)モデルは,利益に対する株式リターンの係数を保守主義の尺度としていることから,企業・年の変数を推定することには不向きである。そこで,Basu (1997)モデルに基づき,企業特徴(企業規模,時価簿価比率,レバレッジ)を組み込むことで,企業・年の変数を推定することを可能にしたKhan and Watts (2009)モデルを,本研究では用いることとした。また,無条件保守主義の程度の測定には,先行研究でも多く使用されているBeaver and Ryan (2000)モデルを使用することとした。 これまでに,公募債発行の企業と私募債発行の企業について,条件付・無条件保守主義の程度の測定を行い,その指標と負債コストが関係しているか否かを調査した。分析の結果,条件付保守主義は負債コストと関係しておらず,一方で無条件保守主義は,公募債の場合に負債コストと関係(負の関係)があり,私募債の場合には関係があるとは言えないことが確認された。今後は,このような分析結果について,差異をもたらす要因を考察し,検証モデルの精緻化を図ることで,より頑健的な研究成果を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は,①日本企業の会計情報の保守性を測定し,②2種類の社債(公募債・私募債)の発行企業の会計保守主義と負債コストの関係の分析を行った。研究の進捗に合わせて,研究成果を原稿にまとめる予定であったが,①について測定に必要となる変数が多岐にわたることから時間を要し,投稿するまでには至らなかった。今後は,銀行ローン等他の種類の負債についての検証も含め,研究目的の達成に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究のサーベイの結果,会計保守主義と債務契約との関係を検証している諸外国における研究は多いものの,日本企業を対象とした研究は多くないことが分かった。今後の推進方策として,債務契約の種類別に債権者の特徴を把握し,それらの特徴と会計保守主義との関係性を理論的に考察する。そして,その関係性が実際のデータを用いて実証的に支持されるかを分析・検証し,会計上の保守主義の動機及び経済的帰結に関する実証的証拠を蓄積する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由として,財務諸表・株価データに費やす金額が予定よりも低額であったことがあげられる。いずれもデータの更新が必要であるため,研究の進捗と発売時期を考慮して購入する必要があり,延期している状況である。 購入を延期したデータ・ベースや,より高度な統計処理を行うためのソフトウエアの購入にあてる予定である。
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