2014 Fiscal Year Annual Research Report
会計上の保守主義の動機と経済的帰結に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
24730408
|
Research Institution | The University of Aizu Junior College Division |
Principal Investigator |
大橋 良生 会津大学短期大学部, その他部局等, 講師 (50442017)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 財務会計 / 条件付保守主義 / 無条件保守主義 / 債務契約 / 負債コスト |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26度は,前年度に引き続き,会計上の保守主義が負債コストにどのように影響しているかを検証した。債務契約に対し,保守的な会計報告を行うことで,過度な会社財産の社外流出やデフォルト・リスクの上昇の回避が期待される。また,会計上の保守主義は,経済的損失を会計利益に織り込むタイミングの差異から無条件保守主義と条件付保守主義に区分され,債権者に対して異なる効果があることが指摘されている。 (1) 新規借入金契約を対象とした条件付保守主義の効果に関する実証分析では,条件付保守主義の程度と利率スプレッドとの間に負の関係が示された。これは,経済的バッド・ニュースを適時的に会計利益に織り込む程度が高い企業は,低い利率で借入金による資金調達ができていることを示唆している。 (2) 社債契約を対象とした実証分析では,利回り,償還期間,担保の設定,および社債格付に対する無条件保守主義水準尺度と変動尺度および条件付保守主義の程度の影響を検証した。分析の結果,より高い無条件保守主義が利回りスプレッドの低減や上位の社債格付に結びついている可能性が示された一方で,条件付保守主義が契約の効率性の向上に寄与していることを示す証拠は得られなかった。 保守的な会計報告を行う動機の中でも,諸外国企業を対象とした多くの先行研究で注目されている債務契約を取りあげ,日本企業による資金調達における重要性から借入金契約と社債契約における保守主義の機能を検証した本研究におけるこれらの発見事項は,保守的な会計報告が債務契約の向上に寄与していることを示しているものの,債務契約における2つのタイプの会計保守主義の会計上の保守主義の機能や有効性に,債権者の特徴(私的・公的債権者)が関係している可能性があることを示唆している。
|
Research Products
(6 results)