2012 Fiscal Year Research-status Report
大震災後の農村地域医療における公立病院等と住民参加の政策課題:岩手モデルの可能性
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24730422
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
桑田 但馬 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (40405931)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 病院再建 / 住民参加 / 岩手モデル |
Research Abstract |
当該年度の研究成果は概ね次の三点である。第一に東日本大震災により甚大な被害を受けた岩手沿岸・南東部の県立病院(例えば、高田病院、大槌病院、山田病院)の詳細な復旧状況を明らかにした。第二に、岩手県が決定した高田病院等の再建方針の問題を、主として地方行財政の点から明らかにした。第三に、(農村)地域医療における住民参加に関する文献等のサーベイを進めるとともに、その先進と思われるようないくつかの事例について実態調査を行った。 第一の点については、これまでたびたび現地に通いながら状況を把握してきたが、医師招聘や患者数の変化に違いがみられ、病床復活についても高田病院のみとなっており、復旧に格差が出てきている。 第二の点については、県は平成24年8月に大東病院、平成25年1月に高田病院、大槌病院、山田病院の大幅機能縮小を表明したが、過去の機能縮小改革と同様に、地域住民等との対話がほとんどなかった。 第三の点については、福祉や保育に比べて住民参加が遅れていると思われる医療であるが、そもそも地域医療における住民参加とは何かという問題意識を持ちながら、先行研究を読み始め、また、先進事例と想定している、岩手県で言えば、旧藤沢町(現一関市)や西和賀町(とくに旧沢内村)、全国で言えば、兵庫県丹波市等の実態を現地調査した。 先進事例をみると、岩手の多くでみられる地域住民の政治的な運動による県(医療局)との対立と違い、関係者が同じ土俵に立って地域医療の充実および公立病院の運営に取組んでおり、岩手モデルの可能性にとって非常に重要なヒントがあると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩手県南東部の県立病院をはじめ県内の公立病院の実態調査は計画以上に進展している一方で、とくに地域医療における住民参加に関する先行研究のサーベイがやや遅れており、理論的な組み立てがまだまだ不十分であり、その他の進捗状況も含めてトータルで達成度をみれば、おおむね順調であるとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について次の二点を挙げておきたい。 第一に、地域医療における住民参加に関する先行研究のサーベイを重点的に進め、理論的な側面の補強をしっかり行ったうえで、岩手の地域医療・公立病院でみられる復旧・復興問題あるいは全国を含めた先進事例の核心あるいは重要性などを再整理していきたい。 第二に、岩手モデルの最大のポイントになりうる県立病院中心の地域医療スタイルについてとくに被災地での保健・医療・介護(福祉)の連携あるいは地域包括ケアシステムの構築・充実、そして県と市町村の連携に関する課題を重点的に明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度については、旅費、謝金等、その他において計画よりも若干の違いが生じたが、研究計画の変更によるものでなく、許容範囲であると認識している。 次年度の研究費の使用については、当該年度とかなり同じような計画にもとづくために、当該年度と同じような結果に終わるかもしれないが、研究計画の変更を想定していないことに言及しておきたい。
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