2012 Fiscal Year Research-status Report
マックス・ヴェーバーの東アジア論における神義論問題の発展的研究
Project/Area Number |
24730436
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
荒川 敏彦 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (70534254)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | マックス・ヴェーバー / 神義論 / 中国 / 近代化論批判 / 理解社会学 |
Research Abstract |
本年度は、『儒教と道教』の神義論問題を考える基礎的作業を行い、3つの論文を発表した。報告論文「マックス・ヴェーバーにおける生活態度論」では、「近代化」論的ヴェーバー解釈を批判し、『儒教と道教』に近代化の「阻害」論を見る解釈に対して、「生活態度」の固有な「形成」論の視点から修正を迫った。 論文「マックス・ヴェーバーの社会的分化論」では、『カテゴリー』論文を対象に、(1)発展の非一元的な双方向性、(2)解体と創出のダイナミズム、(3)重層的関係、(4)圏域の多様化・同時併存などの点を析出し、「近代化」論とは異なるヴェーバーの歴史的動態の概念構成を明らかにした。 論文「マックス・ヴェーバーにおける理解社会学と神義論問題」では、ヴェーバーの神義論問題を評価した先駆的業績であるF.Tenbruckの神義論問題解釈が「進化論」的であることを批判的に吟味し、Tenbruckが作品史的視点から軽視した『宗教社会学』をこそ、神義論問題を最初に指摘したテキストとして重視すべきとした。そこでは、神義論関連の教説に加え、行為者の「願望」や「要求」、宗教的な「観念」や考え方の「傾向」、「倫理的態度」の形成や一定の態度へ「駆り立てる力」などが言及されているからだ。神義論問題を通してヴェーバーが論じているのは、宗教的秩序と行為との相互連関を媒介として宗教性が絶えず再構成され、文化が独自な仕方で形成・転換されていく道筋なのである。その上で、神義論の構造、すなわち苦難に面して宗教的秩序の意味を問い、その解答から自己と世界を再把握するという神義論の構造と、理解社会学の構造、すなわち個人の行為に関して秩序を問い、秩序に準拠した(秩序を形成する)行為を理解するという理解社会学の構造とが、類似していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られた成果を、関連する論文3本にまとめることができた。(「マックス・ヴェーバーにおける生活態度論――『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』と『儒教と道教』」、「マックス・ヴェーバーの社会的分化論(1)――『理解社会学のカテゴリー』の検討」、「マックス・ヴェーバーにおける理解社会学と神義論問題――先行研究とその批 判」)
|
Strategy for Future Research Activity |
当初申請した予定に沿って研究を進める。『儒教と道教』の解釈史、中国思想史における神義論問題の検討などが課題となる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
|
Research Products
(4 results)