2013 Fiscal Year Research-status Report
マックス・ヴェーバーの東アジア論における神義論問題の発展的研究
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24730436
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
荒川 敏彦 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (70534254)
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Keywords | マックス・ヴェーバー / 儒教と道教 / 神義論 |
Research Abstract |
本年度の大きな収穫は、採択者も主催者の一人である研究会で、台湾から研究者を招き、中国におけるヴェーバー受容が台湾の研究者とくに余英時の教え子である康楽氏を中心に進められてきたこと、また1980年代以後の「ヴェーバー熱」において、「儒教資本主義」を主張する立場(余英時)と「合理化」論を重視する立場(東海学派)とが対立していたことなど、種々の貴重な知見を得ることが出来たことである。『儒教と道教』の神義論問題を中心とする本研究課題にとっても、台湾および中国においてヴェーバーがどのように受容されているかは看過できない問題だからである。 また、道教的呪術の一系譜としての占いとの関連で、論文「戦後日本における暦の変遷(1)」を執筆した。これは、大安や仏滅などの六曜をはじめとする占いが、明治から戦前戦中にかけての政府によって、暦への記載を禁じられていく経緯を追ったものである。それまで日常的に存在していたものが、ある日突然、禁止される。ある事柄がいかにして「迷信」とみなされていくのかという政治的プロセス、また、その統制に対する民衆の抵抗を、主として制度的側面から詳細に追うことが出来た。暦における占いは、神(天)の義を疑わないところで成立しているが、儒教と道教の文化圏の一角をなす日本の近代について、暦と占いの関係を明らかにするなかで、神義論問題において何を「神」とするかという、一神教文化では発生しない問題が関連することに気づくことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明末清初期の重要な思想家とされる黄宗羲、顧炎武、王夫之らの文献について、神義論という観点から検討を始めた。 また、ヴェーバーの参照した西欧における中国研究を蒐集し、今後の研究の下地を作ることが出来た。 さらに、日本近代における暦の占いに関する研究を通して、何を「神」とするか(天、天皇、道教の神々、等々)という問題が関連するという問題の発見は、本研究の内実を深めるにあたってきわめて重要な示唆であった。
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Strategy for Future Research Activity |
テキスト的および歴史学的知見の整理を踏まえて、神(天)の正義を疑うというラディカルな問いが持った社会的な駆動力を、その限界とともに明らかにしていく理論的作業を進める。 ヴェーバーの比較宗教社会学は、近代資本主義の世界的な展開に対する、諸文化圏に固有な対応を導いたエートスの研究であり、16~17 世紀の近代資本主義の端緒を考えるための(世界システム論等とは異なる)新たな視点を提供しうるだろうとの見通しを持って、『儒教と道教』の新たな解釈の可能性を探っていく。とりわけ、明末清初期の思想に胚胎されながら、その後、清朝によって封じられていった思想を、神義論の観点から探り、再検討していくことが課題となる。
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Research Products
(1 results)