2012 Fiscal Year Research-status Report
大都市商業地域の更新・変容過程における若年自営業者層に関する社会学的研究
Project/Area Number |
24730437
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
下村 恭広 玉川大学, リベラルアーツ学部, 准教授 (00350372)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 自営業 / 地域社会 / 都市 / まちづくり / 若者 |
Research Abstract |
平成24年度は、まずは当初研究対象として想定していた東京都杉並区高円寺の実態について再確認を行った。 本研究では新規に流入してきた自営業者が地域社会の中で占める位置づけについて、彼らと既存自営業者層との関係構造、そして両者の相互作用過程を中心に検討することを重要な調査項目としている。このような既存自営業者層と若年自営業者層の関係について高円寺地域では、主に賃貸用店舗を供給する建物所有者とその賃借人との関係を検討することが重要である。しかし、それ以外での両者の相互作用の接点が、当初想定していたほど頻度の高いものではなかった。これは、この地域における若年自営業者層の流動性の高さに起因するものと考えられる。 そこで、この両者の関係についてより具体的に観察可能な社会過程が展開する地域について、研究対象を再度検討する必要が生じることとなった。研究目的に照らして、東京都内都心周辺各地域において、近年になって零細事業者を中心とする特定業種の集積地域に変容しつつある地域を複数選出して比較考量した結果、台東区南部地域における卸売業を中心とする地域社会を新たに調査対象地域として再設定することとした。 この地域はもともと墨田川流域における雑貨工業の中心となる卸売商が集まる地域であったが、近年は服飾およびファッション関連雑貨のデザイナーや小売店などの若手自営業者の集積が見られる。また高円寺とは異なり、既存自営業者層と一定の関係を保ちながらまちづくりのイベントなどを実施していることが判明した。今後は、この地域で生じている社会過程を調査対象として研究を進めることとする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初所定していた研究計画と照らすと、大幅な遅れが生じている。その理由は第一に調査対象地域の再設定を行ったためである。新しい調査対象地域の選定に時間がかかってしまった。第二に、それに伴い研究枠組みについての再検討を迫られたこともある。調査対象地域の選定には、研究目的に見合った地域類型を把握しておくことが前提となるが、それについての考察を加える必要があった。 しかし、平成24年度3月末までの段階で当該地域に関わる文献資料収集、町丁目別官庁統計収集とその分析に着手するとともに、5件のインタビュー調査を実現させている。これらで得られた情報の整理と分析は平成25年度に入ってから進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、研究目的に即して東京都台東区南部を調査対象地域とし、そこで近年増加している若年自営業者と彼らを取り巻く地域的文脈について明らかにする。本研究がこの地域での若年自営業者の起業と定着を左右している要因として想定しているのは、次の二点である。第一に、この地域に集積している既存の卸売業/製造業の事業者が作り出している地域的分業構造の変化である。第二に、この地域が他の都心地域に比べて相対的に安い賃料で店舗やアトリエを借りられる状況となっていることである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、本研究の目的により合致する研究対象を探索するため、当初研究対象としていた杉並区高円寺のほか、都内の複数地域を検討した。その結果、研究活動に必要な予算の執行を一時的に留保することとした。その結果平成25年度は、本来平成24年度に予定されていた作業を含めての研究となる。具体的には以下の通りである。 (1)台東区の産業政策とインキュベーション施設の事業内容に関する調査 調査対象地域への若年自営業者の起業・定着を促している要因として、行政による政策があることを調査する。主な対象は区営のインキュベーション施設である「台東デザイナーズビレッジ」である。 (2)若年自営業者の起業過程に関するインタビュー調査 調査対象地域で新規開業している若年自営業者の経営実態、商品流通の特徴、経営者の開業経緯のパターン、そして彼らの社会的属性について明らかにする。 (3)卸売業と製造業に対する聞き取り調査 調査対象地域に集積する卸売業と製造業について、代表的な業種(皮革産業と袋物産業等)を選び、生産流通構造の現状と地域的分業構造の実態について明らかにする。そこでの分業構造の実情や変化の方向性については、業種ごとに、またその業界を構成する異なる立場(卸売業者、メーカー、職人等)ごとに聞き取りを行う必要がある。これと平行して、調査対象地域に長く居住する住民層の動向を、家屋や貸し店舗の供給者としての側面から明らかにする。 (5)データの分析と調査協力者への事後説明 これまでの調査結果について分析するとともに、できるだけ早い段階で簡単なまとめを作成し、調査協力者に対して事後説明を行う。聞き取り調査のテキスト化、調査結果の郵送などにおいては申請者の勤務校において研究補助の学生に協力を依頼する。
|