2014 Fiscal Year Annual Research Report
大都市商業地域の更新・変容過程における若年自営業者層に関する社会学的研究
Project/Area Number |
24730437
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
下村 恭広 玉川大学, リベラルアーツ学部, 准教授 (00350372)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 都市 / 製造業 / 新規開業 / 産業地域社会 / 東京 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東京都台東区南部の「徒蔵(かちくら)」――御徒町/蔵前間――において2000年代後半から顕著となった、ファッション雑貨工業における若年起業家の創業過程を対象とした。ここでいうファッション雑貨工業とは、ハンドバッグ、鞄、靴、ベルト、革小物類、ジュエリー、アクセサリー等の製造業であり、東京の隅田川流域に集積している。近年のファッション雑貨工業は、生産工程の海外移転や、低価格帯と高価格帯の商品のそれぞれにおける輸入品の増加による売上低迷のため、事業所数の減少が続いている。にもかかわらずこの地域では、ファッション雑貨の商品企画、デザイン、卸売、小売を担う零細規模の事業所(クリエイターと呼ばれる)の開業が進んでいる。その直接のきっかけとなったのは、2004年に台東区によって開設された創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」によるところが大きい。零細企業の創業過程は、その存立基盤が複数の事業所の間で結ばれる社会的分業構造にあるため、もっぱら創業者の力によって進むというより、彼らを取り巻く多数の取引先やそれらが依拠する産業地域社会との関係を通じて実現していく。本研究では創業をこのような多数の関与主体の相互作用とみなす観点に立ち、この地域で「クリエイター」と呼ばれる若年新規開業者が企業として自立する過程が、彼らと既存事業者との関係の構築、そして地域への定着の過程であることを明らかにした。この意味での自立は、連続したステップを一歩ずつ上がっていくように成し遂げられるものではない。創業者の視点に立つと、生産ロット、取引慣行、技術・製品の評価基準などにおいて大きな障壁のある、不連続な道のりである。その障壁は、創業者が既存の社会的分業構造の内部に入り込むというだけでなく、既存事業者が彼らと取引関係を作りながら、新しい社会的分業構造を模索していくなかでのりこえられている。
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Research Products
(4 results)