2012 Fiscal Year Research-status Report
生殖における女性への帰責とその回避―人工妊娠中絶にみる当事者エージェンシー
Project/Area Number |
24730445
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
熱田 敬子 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (20612071)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 人工妊娠中絶 / 生殖 / 主体 / 責任 / 選択 / 自己決定 / ジェンダー / 当事者 |
Research Abstract |
1.調査の実施 2012年度は、計画に沿ってインタビュー調査を実施した。 インタビュー協力者は、人工妊娠中絶を経験した女性とそのパートナー、また比較対象としての死産・流産を経験された女性たちである。ことに、人工妊娠中絶を経験した女性のパートナーにお話を伺った類似の研究は、日本ではこれまでほとんどない。貴重なお話である。また、新たなインタビュー協力者を得ることもでき、次年度の調査につなげていく予定である。 2.データ整理 インタビューデータのテープ起こしおよび、整理を行なうとともに、質問設計に若干の修正を加え、2度目のインタビューへの準備をしている。(今年度以降フィードバックとともに、補足のインタビューを行なう予定) 3.理論的背景 博士論文全体のテーマとなる、中絶経験をめぐる自己決定/自己選択と責任帰属の問題を整理するため、「当事者」概念を理論的前提とする。しかしながら、「当事者」概念はまだ新しく、統一した定義もない。今年度はその定義、限界、理論的な効果を明らかにすべく、理論研究として「当事者」概念の批判的検討と整理を行なった。「当事者」概念が紹介される際、その出自が障害者の自立生活運動にあることは、現状見落とされがちである。だが、「当事者」概念が「当事者」の代弁不可能性を掲げていることを考えれば、自立生活運動の、「当事者」には、親や医師、支援者など身近な人間にも代弁されない本人の意志があるという主張を忘れるわけにはいかない。同時に、自立生活運動は自己決定という意思表示の概念に対しても、他者との関係性の中で見落とすものがあると指摘している。「当事者」概念を分析することは、中絶を女性の選択と表現するかどうかを考える上で、非常に参考になる。 この成果は、2012年度の日本社会学会で発表を行なった他、新曜社の『ワードマップ 現代エスノグラフィー』に初学者向けの紹介としてまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー実施が予定件数よりもすすんだ反面、予定していた補助作業者の協力が得られず、データ整理がやや遅れている。この遅れは次年度以降、別の補助作業者の協力を確保し、とりもどす予定である。 また、「当事者」概念の整理については、単独の論文が2013年度に提出できる程度にすすんでいる。これは予定していたよりも若干速いスピードである。 これらのことを考えあわせると、研究は概ね順調に進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は追加・補足インタビューを行なうとともに、データの整理につとめ、インタビュー協力者へのフィードバックを行なう。また、2012年度にまとめた「当事者」概念についての批判的検討を、単独の論文として査読付き雑誌に投稿予定。 2014年度に、インタビューデータを論文として成果発表できるよう準備を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
人件費 研究補助者の協力を確保したため、2012年度にデータ整理の協力が得られなかった分を、すすめるため、アルバイト料を支払う。10万円。 インタビューのための旅費 10万円 図書費用 8万円 雑費・印刷費 6万円
|
Research Products
(2 results)