2014 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ知的障害親の会レーベンスヒルフェの地域史研究:特殊教育との人的連続性
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24730469
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
高柳 瑞穂(松本瑞穂) 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (60588010)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ / 知的障害 / 親の会 / 歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度はドイツ調査を遂行できなかったため、主に資料分析を中心に実施した。分析に用いた資料は、主に地域レベルのレーベンスヒルフェ(親の会)のリーダーであった女性が1980年代に執筆したディプロム論文である。2011年に実施した彼女へのインタヴュー内容と照らし合わせて分析を試み、現在までに以下のことが判明している。 1970年代から80年代にかけての南部ドイツの障害児福祉施設は、数そのものは順調に増加していったものの、内容的は障害種別のセグリゲーションが中心であった。もっとも、増設偏重で内容が乏しかったというわけではなく、主に親のニーズに応じてさまざまなプログラムも整備されていった。 当時の状況を直接に知る彼女は、はっきりと「徹底したセグリゲーション」であったと述べている。ただし、当時の親たちが既存の施設に子どもの教育を全て委ねることに疑問を抱き、そのことが特殊教育に対する関心を喚起し、自ら特殊教育的なプログラムや施設を立ち上げる活動へと駆り立てられていく構図も浮き彫りとなった。このことは、「1980年代の親にとって親の会の存在は所与のものとなり、創設者世代の持っていた問題意識やモチベーションが低下していった」とされる、全国レーベンスヒルフェ史上で描写されている世代像とは異なる。 この点については、投書の研究目的と併せて調査が必要と判断される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年度はドイツ調査が遂行できなかったが、一定の知見と新たな作業課題が析出された。
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Strategy for Future Research Activity |
中断しているドイツ調査を再開する。ベルリン及びバイエルン州の地域調査が主となる予定である。4~5か所の複数の地域史比較を行う予定であったが、前述のとおり、地域間のみならず全国レベルの親の会と地域レベルとの比較も行わなくてはならないため、取り上げる地域の数は縮小する可能性もある。
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Causes of Carryover |
2014年度後期より病気のため休職しているため、当初の予定よりも残額が多い。大学側の事情もあり復職日は未定である。復職し次第、科研遂行を再開するが、仮に2015年度後期より再開したとしても1年以上、停滞していたことになり、このままでは計画遂行は厳しい。よって、2016年度への繰り越しを希望している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年2ないし3月、2016年5ないし6月(授業期間内のため数日のみ)、2016年8月にドイツ出張を予定している。必要に応じて、2017年2ないし3月にも実施する。また、ナチの過去を持つドイツの歴史研究者に対する門戸は固く、当初予想していた以上にヒアリング等はデリケートであるため、今後は通訳を雇う予定である。
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