2015 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ知的障害親の会レーベンスヒルフェの地域史研究:特殊教育との人的連続性
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24730469
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
高柳 瑞穂 (松本瑞穂) 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (60588010)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ / 知的障害 / 親の会 / 歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は9月13日~9月21日、ドイツのベルリンで、ドイツの知的障害児者の家族会であるレーベンスヒルフェに関する献調査を実施した。訪問地はドイツ社会問題研究所の福祉図書館、ペスタロッチ・フレーベル館内にあるアリス・ザロモン・アーカイヴ、および国立図書館ベルリン館である。 ドイツ社会問題研究所は、福祉に関するドイツ語のすべての文献を収集し利用可能にするというプロジェクトを遂行中であり、その福祉図書館はたいへん充実している。日本の国立国会図書館とは異なり、ドイツの国立図書館はドイツ国内のすべての出版物を所蔵しているわけではないため、ここでしか入手できない文献がたいへん多かった。 ここで収集した論文や文献、また今回の調査で併せて収集した最新の文献を通して、筆者が研究活動スタート支援並びに当該科研で仮説的に提示していたいくつかのことが裏付けられた。前回科研から引き続き、レーベンスヒルフェと特殊教育界の人的連続性を示してきたが、今回は特に、医学部教授などの学識者で固められた研究者委員会(もしくは学術委員会wissenschaftlicher Beirat)の役割が明確になった。レーベンスヒルフェでは、1958年の創設当初から研究者委員会が任命さてれており、同委員会には、「学術的な諸団体と結びつき、社会的な問題提起を通して制度や施設を構築していく」という使命が課されていた。研究者委員会の活動もまた、レーベンスヒルフェの専門職志向および施設志向を推進し、強化していく要因の一つになったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に示した内容を遂行できたため、おおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
レーベンスヒルフェと特殊教育界、ならびにレーベンスヒルフェと大学教授(主にマールブルク大学医学部・教育学部)の人的連続性と、それがレーベンスヒルフェの活動へ及ぼした影響については既に指摘したとおりである。今後は、占領期ドイツとレーベンスヒルフェ創設の関係や、レーベンスヒルフェの強制断種手術問題への姿勢や思想について分析し、レーベンスヒルフェの歴史の全体像をとらえ、またそれらが戦後ドイツの知的障害福祉領域にどのように位置づくのか、検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度後半から平成27年度初頭まで休職していて、その間、科研費を使用していなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
復職し科研費使用を再開してからは、ほぼ計画どおり使用している。1年間の延長手続きをしたこともあり、全額使用予定である。具体的には、平成28年度夏・春に、ドイツならびにアメリカやイギリス等、レーベンスヒルフェ創設に大きな影響を与えた親の会の拠点を訪問する予定である。レーベンスヒルフェ創設者トム・ムッタースへの影響や、レーベンスヒルフェ全体の理念や思想への影響を調べるためである。
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