2016 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the Local History of the "Lebenshilfe": A Focus on the Personal Continuity between "Lebenshilfe" and the Special Educational System
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24730469
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
高柳 瑞穂 (松本瑞穂) 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (60588010)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会福祉史 / 障害福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツ知的障害親の会レーベンスヒルフェの1958年の設立に際し、大きな影響を与えたと言われるイギリスのMencap(正式名称The Royal Mencap Society)を調査した。Mencapは、〝The National Association of Parents of Backward Children”等の名称を経て現在に至る。レーベンスヒルフェの創設時の重要なエピソードの一つに、後に理事となる主要な人物たちがイギリスを訪問し、ジョージ・リー氏と会ったということがあげられる。 ジョージ・リー氏は、1957年から1980年までMencapの事務局長を務めた人物で、ナチ支配下のドイツ、オーストリア、チェコ=スロヴァキアからユダヤ人の子どもを救出する「キンダー・トランスポート」で有力な役割を担ったクェーカー教徒でもあった。戦後は「セイブ・ザ・チルドレン基金」に携わりギリシャで活動し、英国リハビリテーション協会(British Council for Rehabilitation)を経てMencap事務局長に就任した。 なお、当初の研究計画で予定していたアーカイヴ調査は実施できず、レーベンスヒルフェへの具体的な影響は依然として不明である。MencapのResearch Teamからは「歴史資料は存在すると思うがアクセス可能な形に整えられていない」という回答があった。他団体や博物館等を紹介され、問い合わせたがいずれも回答は得られなかった。戦前から戦中にかけて、英国政府はユダヤ人難民の受け入れに最も非協力的であったと言われる(本間 1990: p.64)。筆者の主眼はナチズムではないが、それでも、歴史研究者に対する警戒心を呼び起こしてしまったかもしれない。イギリスの知的障害関連の親の会に関する本格的な歴史研究が英語圏でも極めて少ない理由の一端は、ここにあるのかもしれない。
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