2012 Fiscal Year Research-status Report
後発福祉国家の雇用保障と社会保障に関する国際比較研究
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24730475
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
金 成垣 東京経済大学, 経済学部, 准教授 (20451875)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究では,これまで東アジアの社会保障に関する研究から得られた「後発福祉国家論」という視点にもとづいて,①日本,中国,韓国,台湾における雇用保障の歴史と現状,そしてその社会保障との関連性について国際比較分析を行い,これにより,②後発福祉国家論のさらなる理論的発展を試みるとともに,③各国における制度改革や今後の東アジア地域統合に向けての政策提言の可能性を探ることを目的とする。 この目的を達成するために,平成24年には,各国の雇用保障・社会保障に関する歴史・現状分析と後発福祉国家論に関する理論研究とを併行して研究をすすめてきた。前者に関して,社会保障に関してはすでにいくつかの研究成果を出しているため,本年度は主に雇用保障とかかわる諸政策・制度に関する調査・分析を行なった。そして後者に関しては,文献研究や学会・研究会での報告・討論を中心とした研究方法を通じて,後発福祉国家論という新しいアプローチの理論的洗練を図った。 具体的な研究成果としては,「後発福祉国家における雇用保障政策――韓国の選択」(『社会科学研究』第5・6号),「後発福祉国家としての日本――全部雇用政策と国民皆保険・皆年金体制の統合」(『週刊社会保障』No.2667),「福祉国家とポスト福祉国家の挟間で――中国の福祉改革のゆくえ」(盛山和夫・上野千鶴子・武川正吾編『公共社会学2 少子高齢社会の公共性』東京大学出版会),「失業者の社会保障」(埋橋孝文・于洋・徐宋編『中国の弱者層と社会保障』明石書店),「ポスト『3つの世界』論の可能性――比較福祉国家研究における類型論と段階論」(武川正吾編『シリーズ福祉社会学I 公共性の福祉社会学』東大出版会),「後発福祉国家としての韓国――日本との比較」(『週刊社会保障』No.2716)などがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の【研究実績の概要】に記載しているように,各国の歴史・現状分析に関しても理論研究に関しても,研究目的に応じた数々の研究成果を出しており,順調に研究がすすめられていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には,平成24年度の到達点をふまえて研究を遂行していく。基本的には平成24年度におけるのと同様の方法で研究をすすめる予定である。 (1)まず,各国の歴史・現状分析について,前年度と同様に調査を持続していくが,平成25年には,特に韓国についても深層的な資料収集と現地調査をすすめていく予定である。韓国では平成24年末に大統領選挙があったため、それを前後とした政策変化の状況をフォローする必要がある。これに関しては,これまですでに研究交流をしてきた研究者ネットワークを最大限活用していく。また,各国のデータ収集・分析の成果を中間報告書として印刷する予定である。 (2)次に,平成24年度に引き続き,後発福祉国家論に関する理論研究を追究していく。特に,文献研究を通じて得られた理論的成果について,学会や研究会などで中間報告や討論を行うことによって(日本の社会政策学会,韓国の社会政策学会,日中韓社会保障国際論壇など),従来の比較福祉国家論の限界を克服する新しい理論構築の可能性を探っていく。 平成26年度にも,平成25年度と同様,理論的研究と現状分析を持続していくが,この時期は,3年間の研究成果を最終的にとりまとめるための時期となる。したがって,これまで行ってきた後発福祉国家論に関する理論研究にもとづいて,日中韓台の本格的な多国間比較を行うと同時に,そこから見出された東アジアの共通性と多様性から,各国の政策的方向性と今後の東アジア共同体に向けての共通政策の可能性を検討し,その成果を研究報告書として作成する。 なお,最終報告書の完成ののち,その成果を日本国内・外の学会・研究会報告などのかたちで普及していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既述したように,平成25年度には,平成24年度におけるのと同様の方法で研究をすすめる予定であり,このため研究費についても同様の費目が必要となる。具体的には以下のようである。 まず,各国の歴史・現状分析を行うにあたり,現地調査や研究ミーティング,インタービュ調査などが必要となり,そのため,外国旅費として調査研究旅費の比重が大きくなる。ただし当該年度の全体の90%は越えない。また現地調査のための通訳や関連資料の翻訳のための研究補助謝金,そして収集・調査した資料の整理・分析のためのコンピューター及び周辺機器の費用が必要となってくる。次に,理論研究のためには,設備備品費として文献資料代,調査旅費が必要となってくる。また中間報告書のための印刷費も必要となる。
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