2012 Fiscal Year Research-status Report
精神障がい者家族の支援に関する基礎研究-社会的支援への移行に向けての課題-
Project/Area Number |
24730477
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
伊藤 千尋 淑徳大学, 社会福祉学部, 講師 (50458410)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 家族支援 / 精神保健福祉 |
Research Abstract |
本研究は、「支援者としての家族」から「生活者としての家族」へと精神障がい者家族への支援のあり方を問い直すことを目的としている。家族は、精神障がい者本人の治療協力者・支援者として終わりのない役割を担い、精神障がい者本人の地域生活を支え続けている。本研究では、①精神障がい者家族に関する支援施策の歴史的経過を把握すること、②精神障がい者家族の生活実態を整理することで、精神障がい者本人だけでなく、家族自身が対象者として支援されるための根拠を明らかにすること、これら根拠を基に、③家族が包括的に支援されるための具体的な家族支援施策ついて検討することを目的としている。 前記の研究目的に即して平成24年度には、これまでの精神障がい者の家族支援施策の歴史的経過と現状を把握するために文献や資料を収集した。具体的には、平成19年に解散した財団法人全国精神障害者家族会連合会の歴史的資料や文献、都道府県精神障がい者家族会連合会や家族会単会の会報、家族会員を対象とした調査報告書等を収集した。 また、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会より調査委員の委嘱を受け、精神障がい者家族会の現状や家族会支援のためのニーズを把握するために、全国精神障がい者家族会調査(全数調査)を実施した。 さらに、家族が包括的に支援されるための具体的な家族支援施策を検討するために、英国で訪問による家族支援の援助技術を開発し、そのトレーニングを行っているメリデン・ファミリー・プログラムの視察に同行した。プログラムの視察だけでなく、実際にファミリーワークを利用した家族へのインタビューへの同席、家族会支援のための具体的方法である「Caring for Carers」に関する資料も収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は、平成21年度から所属機関の研究日(週1日)に精神障がい者家族会の全国組織である公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)にて相談活動を行っている。平成24年度には調査委員として全国精神障がい者家族会調査を実施した。 本調査は、科学研究費の研究課題の目的に類似するものであり、申請者が計画していた家族会を対象とした調査の対象や方法について再考する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、精神障がい者家族を対象とした先行研究、全国精神障害者家族会連合会と全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)が実施した過去6回の全国家族調査から、家族の生活実態等、時代的変化も含めて整理を行う。 上記で得られた知見を基に調査票を作成する。調査票の作成にあたっては、全国精神保健福祉会連合会に協力を依頼し、ワーキンググループを作り、具体的な作業を進めていく。 質問紙調査では、精神障がい者家族が支援の対象者として包括的に支援されるための根拠を提出するため、家族に関する質問項目に絞り、精神障がい者家族の置かれている状況(精神障がい者本人との同居、家族の年齢、家族の健康状態、家族の経済状況、家族の就労状況、家族の相談相手の有無等)や家族が担っているインフォーマルな支援(具体的な支援の内容やその量)の実態を明らかにする。 さらに、家族会員を対象としたインタビュー調査を実施し、上記のデータの背景にある家族の思い、家族の体験を聞き取り、家族の潜在化しているニーズが明らかになるよう、インテンシブな分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画・方法に沿って実行していくにあたり、精神障がい者家族が包括的に支援されるための具体的な家族支援施策ついて検討するためには、調査に加えて“現場”での状況把握が必要であり、精神障がい者家族会の全国組織である全国精神保健福祉会連合会(みんねっと)の全国大会への参加や当事者である精神障がい者家族を含めたワーキンググループの設置が必要である。 また、調査研究の経費に関しては、質問紙調査の実施に伴う調査票の発送と回収のための郵送代の実費、および調査で得られたデータの打ち込み等、妥当な金額を算出している。その他、国内外の家族支援に関する資料収集や、インタビュー調査実施に伴う交通費・謝金、テープ起こし、調査結果を社会および精神障がい者家族(会)に還元するための交通費、宿泊費を研究経費として使用する。
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