2012 Fiscal Year Research-status Report
終末期ケアにおける日本型「事前指示書」の開発とソーシャルワーカーの役割の検討
Project/Area Number |
24730479
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 繭美 法政大学, 現代福祉学部, 准教授 (90407057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / 事前指示書 / 終末期ケア / ドイツ / ソーシャルワーカー |
Research Abstract |
今年度は、主に文献調査及び国外調査を基軸に研究を展開した。 1.文献調査からは、ドイツの「事前指示書」を実際に入手し、その特徴について読み解くことが可能となった。国内の成年後見制度と比較すると、身上監護や財産管理のみに特化した書類が日本では中心となっているが、ドイツの「事前指示書」では、財産管理から医療的ケア、死後の実務に関することまで包括的に記しており、遺される人にとって、当事者の意思をどのように守るかを判断する材料として効果があることが推測された。 2.国外調査においては、ドイツのニーダーザクセン州およびブレーメン州にある高齢者施設、市民相談機関、デイケアセンターを訪問し、ソーシャルワーカーへのインタビュー調査を実施した。三か所の高齢者施設を訪問したが、どの施設においてもソーシャルワーカーやケアスタッフとともに、高齢者が「事前指示書」を作成する手助けを実施しており、入所者の7割は「事前指示書」を作成していることが明らかとなった。また、それらは入所施設レベルだけのものではなく、市役所に設置されている市民相談窓口などが常時対応するシステムをソフト面も含めて整備しており、2009年に「事前指示書」が法制化されてからの徹底した推進状況が明らかとなった。 一方、課題も浮上しており、当事者の意思と遺される家族の意思が異なる場合、援助者は家族の意向を重視してしまうことも少なくないことがソーシャルワーカーらの口から語られていた。当事者の意思をどこまで尊重するかという課題は、尊厳死法案化がすすめられているわが国の議論とも重なり合う点であり、ドイツの動向は今後も参考になるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に資料収集、国外調査を遂行しており、研究に必要な条件を整えることが可能となった。なかでも、ドイツにおける調査では、求めている以上の資料を収集することができ、研究の幅が広がったと感じている。たとえば、「事前指示書」は、施設によって多少の項目の違いがみられたり、あるいは看取りのケアの具体的項目が記された資料が提供され、わが国の看取り体制に影響のある資料の収集が可能となったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、国内調査及びアメリカにおける国外調査を実施する予定である。国内では、医療に限った事前指示書が散見されるようになってきた。そこにかかわるソーシャルワーカーの役割や、医療に限った事前指示書だけでの課題などについて、訪問調査で明らかにしていきたい。 また、アメリカの調査では、尊厳死法を前提とした事前指示書が主流となっているため、どのように最期に用いられているのか、ソーシャルワーカーはどのようにかかわっているのかを訪問調査で明らかにし、わが国で実施していく事前指示書の課題点を導出していくこととする。 さらには、ドイツで行った調査、および収集可能となった資料を学会発表、もしくは投稿論文等で公表したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度末の3月にドイツ調査を実施したので、そこで入手することが可能となった多大なドイツ語資料を翻訳し、次年度のアメリカ調査および国内調査に活用したいと考えている。 次年度は、事前指示書および尊厳死先進地域であるアメリカオレゴンでの調査を実施予定である。また、国内における事前指示書を作成している医療機関への訪問調査を検討しているため、主として、出張旅費に多くの費用がかかる可能性が高い。また、得られた資料の分析、翻訳に研究費用を用いたいと考えている。
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